2018年に展望テラスをオープン
起爆剤となったのは2018年10月6日にオープンした展望テラス「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR」(白馬マウンテンハーバー)だ。山頂までゴンドラで7、8分。ゴンドラの駅を降りてものの数分歩くと行き当たる。有名な白馬三山を中心とした雄大な山々の光景が広がる。訪れた人々からは感嘆の声が自然にもれる。のんびりと風景を眺めている人たちの姿はひきも切らない。テラスの先端で風景を背に記念撮影する人が列をなしている。
この展望テラスをはじめ、次々に行われた「仕掛け」があり、それは話題を集めるとともに多くの人を呼び込むことになった。
その中心にいるのが、株式会社岩岳リゾート代表取締役社長の和田寛である。
グリーンシーズンの充実を図った直接のきっかけは、スノーシーズンに訪れた危機にあった。
「2015-2016シーズンと2016-2017シーズンの冬、2シーズン続けて記録的な小雪だったのですね」
白馬岩岳スキー場の最高地点は標高1289m。これが例えば白馬八方スキー場の最高地点は標高1839mというように、周囲の山と比べて標高が低いことと、北アルプスから少し離れた単独峰にあるロケーションも雪の少なさに影響した。
雪が少なければスキー・スノーボーダーは訪れない。このままだとスキー場としての存在にかかわる。何かしら手を打たなければならない。
そのとき、スキー場として見た場合には不利な条件となっていた岩岳のロケーションを逆手にとろうと思った。
「山頂の標高が高すぎずゴンドラ1本で山頂まで来られる。しかも北アルプスから少し離れているから展望台としてはいいロケーションになる。それを冬だけにこだわらずにいかせばいいんじゃないかというのが発想のきっかけでした」
もともと景色の眺めのよさは地元でも知られていたという。
「白馬村の人だったらみんな言っていたけれど、といって何か設備があるわけではありませんでした。いいものはあるけれど、いわゆるマネタイズされていない状態だったわけです」
そしてオープンしたのが「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR」だった。
展望テラスにとどまらず、テラス内にはニューヨーク発の人気ベーカリー「THE CITY BAKERY」を誘致した。
「展望台を作っただけだとたぶん面白くないし、他のところでもやっていることです。いろいろ考えて、ほんとうにおいしいものをいい眺めで食べるというコンセプトがいいだろうと思いました。それを全面に押し出した施設はあまり見たこともなかったので。といって自分たちで作っても説得力がないじゃないですか。誰かの力を借りようということでお願いしました」