文=松原孝臣 写真=積紫乃

「THE CITY BAKERY」の入る建物の向こうに山頂テラス「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR」が

全国のスキー場が抱える課題

 グリーンシーズンの大幅な来場者増により経営状態を好転させた白馬岩岳マウンテンリゾート。その成功が大きな注目を集めたのは、岩岳に限らず、全国のスキー場が共通して直面している課題があるからだ。スキー、スノーボード人口の減少である。

 白馬岩岳マウンテンリゾートの変革の直接のきっかけは、小雪にあったかもしれない。ただそれ以前に、滑りに来る人自体が、減少していく未来が容易に想像され、手立てを講じる必要性が岩岳をはじめスキー場にはあった。

「レジャー白書」によると、スキー・スノーボードの参加人口合計のピークは1998年で1800万人。2020年には430万人と、1998年の4分の1以下にまで落ち込んだ。その間、やや前年より増加した時期はあっても、右肩下がりであったのは否めない。

 それが回復する見通しはないし、むしろ悪化する材料がある。和田は言う。

「スキーやスノーボードの人口における参加率が急に上がるということは考えにくい。仮に下げ止まったとしても、今度は人口そのものが減っていくわけです。スキー場の経営が楽になることもないでしょう」

 だからグリーンシーズンの充実を図り、来場者を呼び込む必要性がある。

 もちろん、スノーシーズンについても和田は手をこまねいているわけではない。

「もちろん、スキー、スノーボードのコースを充実させる、圧雪もきちんとやってリフトもしっかり動かして、という基本動作は僕らも絶対手を抜いてはいけないなと思います。でもそこだけで勝ち切れるほどマーケットが楽じゃないというのが正直なところ。であれば知恵を使って、どうやって全体の経営を成立させるかは考えざるを得ないんだろうなと思います。

 例えば僕らがやっていることの一つは、冬は冬でスキーヤーじゃない人にスキー場に来てもらうような仕組みです」

 どういうことか。

「『IWATAKE WHITE PARK(イワタケホワイトパーク)』という名前をつけて、かまくらを作ったり、雪を使って『ここかわいいね』と言ってもらえる仕掛けをいろいろ作ったり」

 つまりはスキーやスノーボードをしなくても楽しめる場所にしようという試みである。

「リゾートって、必ずしも何かしなくても楽しいっていう定義だと思うんですねね。それこそ自分たちがビーチリゾートに行って、ずっと海の上で泳いでるとかアクティビティやり続けているとか、それはないじゃないですか。たぶんプールサイドで本を読んでコーヒーを飲んで、もしくはお酒を飲んで音楽を聞いてというように、時間が楽しいということだと思うんです。

 スポーツ以外でも、冬のリゾート地として見たときにもスキー場の強いところはやっぱりあると思うんですね。インフラがそろっていて、こんな非日常的な空間に来ることができるじゃないですか。ふつうの山では絶対に体現できないことだし、平地でも体現できないですよね。そういう強みをいかした展開を、ノンスキーヤー向けのパーク、『IWATAKE WHITE PARK(イワタケホワイトパーク)』で表現していきたいと思っています」