2019年6月30日、台湾第二の都市、台中の郊外にある温泉地・谷關(グーグァン)に開館した「星のやグーグァン」

文化リゾート・軽井沢で創業

「成長のスピードが速まっている。メディアの皆様から最近、そのようなコメントをよく受けます」。星野リゾートの星野佳路代表はこう話し始めた。

「2020年は1月15日に運営を開始したハワイのホテル『サーフジャック ハワイ』を筆頭に、国内では3月12日開業の『界 長門』(山口県)をはじめ、『BEB5 土浦』(茨城県)、『星のや沖縄』『リゾナーレ小浜島』(沖縄県)、『OMO3 東京川崎』(神奈川県)と、開業やリニューアルがたまたま重なり、そのように見えてしまうのではないかと思います。そのため、成長のスピードを意図的に速めているわけではありませんし、速めようにも、1つの施設を開発するのには3〜7年かかります」

星野リゾート代表・星野佳路さん 写真=徳永徹

 星野リゾートは国内外で旅館やホテル、スキー場など41施設(2020年3月1日現在)を展開するリゾート運営会社である。1914年に長野県軽井沢で創業し106年、初代・星野嘉助氏が開業した一軒の宿「星野温泉旅館」からスタートしている。

 その頃すでに軽井沢は、宣教師アレクサンダー・ショーの功績により外国人別荘地として注目されていた。「避暑地 軽井沢」として評判になり、星野温泉旅館には内村鑑三、与謝野鉄幹・晶子、北原白秋をはじめ、著名人らが温泉逗留し、文化リゾートの香りを地域に根付かせた。

 星野温泉は、「国設軽井沢野鳥の森」の整備に尽力した2代目、西洋のホテルスタイルや斬新なウエディングプランで話題を集めた3代目時代と繁栄をみせるも、バブル経済崩壊もあり苦戦を強いられる。低迷のその時代、1991年に社長に就任したのが4代目の星野佳路代表だ。実家である温泉旅館の再建が、星野さんの経営者としてのスタートだった。

星野リゾート初の軽井沢以外での運営施設「リゾナーレ八ヶ岳」(山梨)

 1995年に社名を株式会社星野リゾートへと変更し、その後、飛躍のきっかけとなったのは、2001年にマイカルグループから運営を引き継いだ山梨県小淵沢の「リゾナーレ八ヶ岳」の成功だった。会員制ホテルを「大人のためのファミリーリゾート」に転換し、見事に3年で黒字化。この功績が注目され、その後の福島県アルツ磐梯スキー場(2003年)、北海道トマムスキー場(2004年)の運営につながる。