世界標準のオールシーズンリゾートに

森の中でくつろぐ人々の姿も

 コロナ前、白馬の来場者の2、3割は海外からであったという。コロナにより減少したが、いずれは回復していくときが来るだろう。

 そのとき、競う相手は国内のみならず、海外のスキーリゾートも含まれる。

 和田は白馬を「世界標準のオールシーズン・マウンテンリゾートにするのが目標」であるという。

 和田が白馬に来る以前から、海外からの観光客が増加していたことは知られている。10のスキー場があり1週間、10日といった滞在期間を飽きずに楽しめること、そして白馬の風景などが広まっていったからだという。海外から移住した人も珍しくはない。つまり、白馬には海外の人々を惹きつけるポテンシャルがある。

 和田はポテンシャルの1つに、雪そのものをあげる。

「雪の量という意味では、世界でトップクラスだと思います」

 補足すれば、世界の豪雪地帯として上位にあがるのは日本の各地域だ。温暖化の影響で雪不足が世界的に問題とされているが、その中にあって白馬の積雪量や海外の人も評価する雪質は強みにほかならない。

 そもそも日本の位置自体が強みとなる。アジアの国々ではスノースポーツに親しむ人、スノーリゾートに憧れる人が増えている。ただ、アジアにおいては本格的なスノーリゾートは天然雪に恵まれた日本にしかないと言って過言はない。ヨーロッパ等と比較すれば格段に距離と移動時間の短い日本は、それ自体がアジアという大きな市場に対してのアピール材料になる。

 10月上旬には新型コロナウイルスの水際対策が大幅に緩和されたが、そこからの変化も豊かな可能性を示している。

「外国から来る人が増えていますね。マレーシア、シンガポール、台湾、香港……。風景、冬は雪のよさ、アジアの中で強みになると思います」

 そのためにはアップデートを図らなければいけないと考える。

「山と雪は世界レベルでも施設はそこに達していません。岩岳では昔からあった、使っていないリフトをだいぶ撤去しました。また、新しいゴンドラを設置し2024年12月に営業を開始する予定です。今のゴンドラは老朽化し、振動や騒音も大きいですし、輸送力も不足していますから」

 あらためて尋ねる。白馬岩岳マウンテンリゾートの成功は、白馬ならではなかったのではないか、と。

「白馬であることは大きいと思います」

 と答えたあと、和田は続ける。

「ただ、その土地のユニークなものを探して、やり方もいろいろあると思うのですね。また、いずれにせよ夏にしっかり稼ぎ、冬も人を呼べるよう、取り組まなければいけないのは間違いないと思います」

 岩岳の白馬三山を望む風景が、知られていてもいかされていなかったように、「白馬だから」、ではなく、どの地であっても、まだ見出されていない財産があるのかもしれない。岩岳の試みはそう思わされるし、何よりも行動を起こしたことに、岩岳の意義はある。

 まもなく、スノーシーズンが始まる。

「世界的なオールシーズン・マウンテンリゾート」への挑戦が続いていく。

 

和田寛(わだゆたか)
白馬岩岳マウンテンリゾート代表。1976年生まれ。東京大学法学部を卒業後、農林水産省、ベイン・アンド・カンパニーを経て2014年、白馬で働き始める。白馬岩岳マウンテンリゾートの経営者として改革に取り組み、グリーンシーズンの来場者数がスノーシーズンを上回るなどして収益を大きく改善する。11月11日に『スキー場は夏に儲けろ! 誰も気づいていない「逆転ヒット」の法則』(東洋経済新報社)を刊行。