白馬で白馬に乗る

 奏功したのは先にあげた来場者数に如実に表れている。

 2019年夏にウッドデッキやアスレチックなどを整備し「Iwatake Green Park」をオープンさせると、2020年8月には、もう1つ大きなヒットとなった設備がつくられた。「ヤッホー!スウィング」である。まるで山々に向かって飛び出していくかのように設置された大型ブランコは、テレビなどで頻繁に取り上げられ、話題を呼んだ。

北アルプス白馬三山を正面に見える場所に設置された大型ブランコ「ヤッホー!スウィング」

「僕らがびっくりするくらいお客さんがやってくれています。休日だと4、5時間待ちだったりします」

 さらにはテラスのオープンに先駆けて2017年に整備されたマウンテンバイクのコースがあり、マウンテンカートも始まり、今年からリード付きの体験乗馬とホーストレッキングがスタートした。

数あるアクティビティの1つ、マウンテンバイクを楽しむ人々

「『白馬で白馬に乗る』、これはここでしかできないですよね(笑)」

 さまざまなアクティビティがある一方で、テラスと反対側には腰掛けてゆっくり村の光景を楽しむ広場があり、腰かけてただ眺めを楽しんでいる人たちの姿がある。

 今春にはもう1つの展望エリア「白馬ヒトトキノモリ」が中腹に完成した。ここにもティーラテやスコーンの専門店で表参道や京都嵐山で人気の「CHAVATY HAKUBA(チャバティ白馬)」を誘致、長野県内では初出店となった。

今春、中腹部にオープンした「白馬ヒトトキノモリ」

 この広場にも、ハンモックでくつろぐ人がいたり、読書する人がいたりする。

「もともとトレッキングコースもありますし、体を動かしたい人、ただのんびりしたい人、どちらも楽しめる場所にしたいという思いがあります」

 来場者の増加は、その狙いがあたったと言えるだろう。

 ではなぜ岩岳でこれらの試みが実行されるに至ったのか。そして成功をおさめることができたのか。

 キーパーソンである和田寛は、もともとは白馬にいたわけではない。

「東京生まれ、東京育ちです」

 そして意外な経歴も持つ。(続く)

 

和田寛(わだゆたか)
白馬岩岳マウンテンリゾート代表。1976年生まれ。東京大学法学部を卒業後、農林水産省、ベイン・アンド・カンパニーを経て2014年、白馬で働き始める。白馬岩岳マウンテンリゾートの経営者として改革に取り組み、グリーンシーズンの来場者数がスノーシーズンを上回るなどして収益を大きく改善する。11月11日に『スキー場は夏に儲けろ! 誰も気づいていない「逆転ヒット」の法則』(東洋経済新報社)を刊行。