■DX企画・推進人材のための「リスキリング実践講座」(1)はこちら

 筆者は現在、住友生命保険に勤務し、デジタルオフィサーという役職でデジタル戦略の立案、執行を担当している。また、社内外のDX人材育成活動として年間40回以上の講演や研修を実施したり、社外企業数社の顧問としてDXの推進やDX人材育成のサポートをしたりしている。

 この連載はDX企画・推進人材が身に付けるべき「企画・推進の仕事ができる力」の養成を目的としている。DXでは新しいことを学び、それを生かして仕事を行う必要があり、これまでの知識やスキルでは対応できない場合が多い。このため、「リスキリング」を行う必要があり、この連載ではそれが学べる。

 前回は、リスキリングは「多様な人材+身近な事例」で学ぶことが有効であることを説明した(多様な人材がなぜ必要なのかは第5回をご覧いただきたい)。今回は、「身近な事例で学ぶことが良い」と考える理由を、「理解の仕掛け」とともに説明しよう。

「コンテンツマーケティング」を理解してみる

 「コンテンツマーケティング」という主にデジタル領域のマーケティングで使われるビジネス用語がある。この用語は、以前も紹介した通り、マインドセット研修の「ビジネス用語理解」のワークショップの題材にしている。

 すると、受講者はネットでコンテンツマーケティングをキーワード検索し、幾つかのサイト記事を調べ、以下のような無機質な文章を書いて説明する。

 しかし、コンテンツマーケティングを知らない人にとって、この説明では深い理解は期待できない。これでは説明をする側も説明を受ける側も「理解したつもり」になるだけだ。

 このレベルではダメなので、筆者は理解を深めるための質問を行う。

 多くの場合、質問された側は即答ができず、困惑した表情をしてその場を終わらせようとするが、筆者が真顔で何回も質問をすると、次第に必死に考えて答えるようになる。この質問コーナーは10分以上続く。

 質問する内容は簡単である。「コンテンツマーケティングで使うコンテンツには何が良いか、できるだけ多く挙げてください」、それだけである。コンテンツマーケティングについての実務経験がある人や実務経験がなくてもコンテンツの意味、事例が分かっていれば答えられる問題である。しかし、理解していない人は困惑する。

 質問された人から答えが出てこなければ、筆者はグループの他のメンバーに答えるように依頼する。すると、他のメンバーが必死に考えて困っている人をサポートしようとして、研修全体が締まった雰囲気になる。この緊張感を作り出すことも「理解を深める仕掛け」となっている。