■DX企画・推進人材のための「リスキリング実践講座」(1)はこちら

 筆者は現在、住友生命保険に勤務し、デジタルオフィサーという役職でデジタル戦略の立案、執行を担当している。また、社内外のDX人材育成活動として年間40回以上の講演や研修を実施したり、社外企業数社の顧問としてDXの推進やDX人材育成のサポートをしたりしている。

 この連載はDX企画・推進人材が身に付けるべき「企画・推進の仕事ができる力」の養成を目的としている。DXでは新しいことを学び、それを生かして仕事を行う必要があり、これまでの知識やスキルでは対応できない場合が多い。このため、「リスキリング」を行う必要があり、この連載ではそれが学べる。

 前回は、なぜ筆者が「スマホ学習」を研修で使うようになったのか、「スマホ」を実務でどのように使っているのかを説明した。今回は、次の「学びの仕掛け」である「多様な人材で学ぶ」について紹介する

まずは「4つのビジネスモデル」を復習しよう

 マインドセット研修の2つ目のワークショップに「4つのビジネスモデル分類に合致する企業を探し、特徴と差別化点を指摘する」というものがある。

 このワークショップは、「デジタルを使ったビジネスモデルを理解する」という目的で実施している。

 昨今のビジネスモデルはデータやデジタル技術をうまく使ったビジネス変革を実現している。従って、DX企画・推進人材には、世の中にどのようなビジネスモデルがあるかを理解し、使いこなせることが求められる。

 筆者は、世界の成功を収めたデジタルビジネスを150社以上調査し、その特徴(使われているビジネス用語=ビジネスの仕掛け)から①~④の4つに分類し、DX事例の参考にしている(この解説は、連載『DX企画・推進人材のための「ビジネス発想力養成講座」の第1回』でも行っている。この機会に、前回の連載を復習してもらうと、この連載の内容をより深く理解できるようになる)。

4分類を学ぶことで「自社ビジネスを強化する力」が付く

 これら4分類は、それぞれビジネスモデルやビジネスの仕掛けが異なっていて面白い。従来の日本企業には③と④が多く、米系IT企業に多いのは①と②である。

 筆者はこの4分類を使い、例えば、これからDXをやろうとしている日本の事業会社(リアルビジネス)には、まずは③の企業群のDX事例を参考にすることをセミナーや講演で提案している。

 では、①や②の企業の商品・サービスはリアルビジネス企業には参考にならないかというと、そんなことはない。リアルビジネスの企業が①、②のビジネスの仕掛けを活用すると、とても面白いビジネスを創出できる可能性がある。

 例えば、リアルビジネスの企業は、①で使われるビジネスの仕掛けである「プラットフォーム」、①や②で使われる「ネットワーク効果」を使うことで、新しいビジネスを創出したり、既存の基幹ビジネスを補強することができる。

 小松製作所(コマツ)の建設業界向けIoTプラットフォーム「LANDLOG(ランドログ)」はその例である。コマツは建設機器メーカーであり、リアルビジネスを行う事業会社である。しかし、ランドログは、①や②の要素を持ったIoTプラットフォームサービスである。

 このようにDX企画・推進人材は、自社の事業、商品、サービスを常に強くするために、デジタルビジネスのモデルを深く理解する必要がある。

 ただし、誰もが日常業務でビジネスモデルを考える仕事を行っているわけではない。だからこそ、普段は触れることがないか、少ない「ビジネスモデルを学ぶためのアクティブラーニング型の研修」が必要になるのだ。