「活用する場」を設定しないと活用されない
業務マニュアルを活用するには、ある程度強制的に「活用する場」を設定する必要がある。
定期的に業務マニュアルを担当者本人もしくは第三者が業務マニュアル記載の手順どおりにやっているか確認する場を設けたり、新人教育は業務マニュアルを活用して行うルールを決めたりとするといったことである。
この「活用する場」の設定こそが業務マニュアルを活用し続けるための最大のポイントである。
「活用する場」の一つとして、「デイリートレーニング」という方法を紹介する。これは、ベテランと新人がペアとなって業務マニュアルを活用しながらお互いに業務遂行しているところを見せ合う方法である。
実施手順としては以下になる。
ベテランが業務遂行
ベテランが業務遂行しているところを新人が業務マニュアルを見ながら観察する。その際、業務要領やマニュアルと違う点など質問があればベテランに確認する。新人にとっては学ぶ場であり、ベテランにとっては標準手順を遵守できているかの確認の場になる。
新人が業務遂行
次に新人が業務マニュアルを見ながら同じ業務を遂行する。その際、ベテランは業務要領をアドバイスしたり、業務手順誤りの指摘を行うことで、新人のスキルアップを支援する。
業務マニュアルの更新
お互い業務遂行する中で、残すべき業務要領があれば業務マニュアルに追記し、誤りがあれば誤りを修正する。
デイリートレーニングは、担当者同士のペアで行うことから比較的実施しやすく実務的なことから、多くの企業で取り入れられている。
更新し続けるための業務マニュアル管理体制
業務マニュアルは個人任せではなく組織的に管理し、更新し続けていく必要がある。そのためには、管理体制を整備しておかなくてはならない。
また、各更新担当者が勝手に更新することを防ぐために、「業務マニュアルを更新した際には、マニュアル管理責任者や部門長の承認を得る」というルールにしておく。
業務改善やシステム変更などが行われ、業務のやり方を変えたタイミングで業務マニュアルを更新する必要性が発生する。基本的には、この更新の必要性に気づいた時に、随時更新を行う。しかし、随時更新だけではどうしても更新漏れが発生する。そのため、あらかじめ業務マニュアルを総点検する「定期更新」を設定するとよい。
定期更新のタイミングでは、更新漏れしている業務マニュアルの更新に加え、あらたに始めた業務や廃止された業務を確認し、「業務体系表」の更新も行う。「業務体系表」の更新に合わせて、業務マニュアルの新規作成、削除も行う。この新規作成・削除については、随時更新では行わないため、定期更新を設定しておくことは重要である。定期更新を確実に行うためにも、あらかじめ年間カレンダーに定期更新のタイミングを設定しておくと良い。
最後に、業務マニュアルは活用しないと、更新の必要性には気づかない。「マニュアルが更新されておらず古い」というケースが発生するのは、そもそも活用していないから、更新の必要性に気づいていないからである。活用こそが更新し続けるための絶対条件で、そのためには「活用する場」を設定することがポイントになる。
コンサルタント 梅田修二(うめだ しゅうじ)
経営コンサルティング事業本部
ビジネスプロセスデザインセンター センター長
チーフ・コンサルタント
システムエンジニアを経験後、2008年JMAC入社。以来オフィスワークの生産性向上(業務効率化、業務品質向上)を専門領域とし、本社管理部門にととまらず、ネット企業、金融、不動産、シェアードサービスなど幅広い対象を支援。専門テーマは、業務改革、業務プロセス改善、働き方改革、情報システム導入、マニュアル作成・活用など。