コロナ禍は「働き方」だけでなく、「暮らし方」や「生き方」に対する人の意識をも変化させた。今、戦略総務のミッションと、その実現のために担う役割とは何か。先進的なHR・総務テック、ゲーミフィケーションドリブン、そしてメタバース世界など、最新のテクノロジーや概念を踏まえながら、大手ゲームメーカーで組織風土や働き方の改革を率いた経験も持つ、HLDLab代表取締役の岡田大士郎氏が、組織と働く人の幸福、ウェルビーイングを実現するための実践的手法を解説する。

※本コンテンツは、2022年5月20日に開催されたJBpress/JDIR主催「第2回 戦略総務フォーラム」の基調講演「未来型フレキシブルオフィスの在り方とウェルビーイング戦略総務の新領域」の内容を採録したものです。

オフィス・組織をワクワクする「場」に変える「戦略総務」とは?

 企業のオフィスやワークプレイスが、大きく変容を遂げつつある。「今や、就業場所としての在り方を再考せざるを得ない時期が来ている」と語るのは、かつてスクウェア・エニックスで米国法人COOや、本社の総務部長を歴任し、「組織風土並びに働き方改革」を通じて、クリエイターの創造性を誘発・触発させる「場」づくりに従事。現在はHRサービスを提供する株式会社HLDLabで、代表取締役を務める岡田大士郎氏だ。

 これまでオフィスは、社員が決められた空間の中に集い、並んで一定時間、一緒に活動する場所だった。そんなオフィスも時代とともに変化しており、集中して作業できるブース型、あるいはそこから出て自由に協業できるオープンオフィス、緑や美しい景色を楽しめる形態のオフィスなども増えている。

 こうした中、総務の在り方も大きく変わってきている。例えば、その変化は「戦略総務」という言葉1つにも表れている。これまで総務部門は、オフィス環境の管理を受動的に担うことが多かった。しかし戦略総務は、より能動的に人が働く環境をつくっていく。そんな戦略総務を岡田氏は「オフィス、組織を『場』として捉え、より能動的に人々にワクワクしてもらえるよう意識すること」から始めたという。

「オフィスという実体空間だけでなく、さまざまな想いや知識・アイデアを持った人が集まって空間をつくっています。また、伝統文化や規範・制度を持つ組織空間があります。さらに対面だけでなく、メール、チャット、ビデオ会議などによるコミュニケーションの空間、情報空間。こういった空間を統合的に循環させて、ワクワクする『場』を構成する。それが戦略総務ではないかと考えます」

「働き方」から「生き方」へ。組織と人のウェルビーイングの実現

 一方、戦略総務には「働くこと」への視点も欠かせない。「総務にとっての『お客様』は従業員です。彼らの働く目的は、生活のため、社会貢献・社会価値創出のため、生きがいや夢の実現など、さまざまです。一方、人生100年時代には、定年後に30年余りもの時間があります。それを考え合わせると、働くことの根底にあるのは『幸せな人生の希求』といえるのではないでしょうか」と岡田氏は問いかける。

 コロナ禍は、ワークスタイルを大きく変革した。リモートワークが当たり前になり、出社・通勤という概念が変質した。「仕事よりも生命が大切」といった意識が生まれ、WAA(Work form Anywhere and Anytime)、つまり働く場所や時間を自由に選ぶフレキシブルワークが浸透してきた。仕事と休暇を合わせたワーケーションも可能になってきている。

 岡田氏は、こうした「働き方改革」の先にあるのは「暮らし方・生き方改革」だと考えている。「これまではオフィスで管理されながら義務的に仕事をしてきたものが、これからは、自分でワークスタイルを設計しながら自立的に価値を創造するように変わっていくでしょう。こうした意識が自分の暮らしや生き方、さらには組織、コミュニティをどうやって幸福にするか、自分がどう貢献できるか、という方向に進んでいくと思います」

 これらを踏まえ、今後の戦略総務の役割は、幸福つまりウェルビーイングの創造となっていくのは明らかだ。そのためには、成果を出し収益を上げていく「組織ウェルビーイング」開発と、人間がワクワクできる「ヒューマンウェルビーイング」つまり人間のための「場」つくりという2つを軸に回していく必要がある。またこれらを実践していく上では、従業員の心身の健康はもちろんのこと、ダイバーシティ経営、ウェルネス経営、CSR、ESG、SDGsといった領域も、必然的に戦略総務が担っていくことになる。

「ワーク・ライフ・バランス」のように、ワークとライフという異なるもののバランスを取るだけではなく、「ライフ・アンド・ワーク・ハーモナイゼーション」「ワークハピネス」といった視点で、働くことに喜びを感じる「場」をつくっていくべきだという。「例えば、職場における個の幸せの要素は、つながり、安心、自分らしさ、自信、勇気、やる気、やりがいの7つだとする『ハピネスダイヤモンド理論』といったものもあります。こうした学びも、戦略総務の重要なミッションの一部です」と岡田氏は語る。