今回は製造業のDXにおける最も重要な考え方となる「ボトルネック解消とスループット最大化」について解説していきたい。

 製造業の工程にはさまざまな課題が存在することはこれまでにも述べてきた。その影響があってなかなかスムーズに生産性が上がらないことが散見される。そのように工程の中で他と比べてパフォーマンスが劣る工程のことをボトルネックと呼ぶ。ボトルネックを発見してその能力を引き上げることによってライン全体ないしは工場全体の単位時間当たりの生産能力を引き上げる、これがスループットの向上だ。具体的に解説していこう。

工程におけるボトルネックとは

 生産工程の中でパフォーマンスが十分に上がっていない工程があったとしよう。当然ながらさまざまな要因が考えられるが、そのような工程が見つけられずにそれぞれが自工程に注力している製造現場をよく見る。自工程だけの改善ではうまくいかなくなってきているにもかかわらず、いまだにそんなことが行われているのが日本の工場の実態であったりする。

(1)ボトルネックとは何か
 工程の中でも期待値から最もパフォーマンスが乖離していて大きな生産性低下が起こり、他の工程に影響を与えてしまっている工程を称してボトルネック工程(または単純にボトルネック)という。

 ボトルネックというのはその名のごとく、瓶の口のように細くなっていることを表している。瓶の口は中身が全部出ていかないように細くなっているわけだが、中に入っている液体やそれが常時、流れ続ける工程のような状態を考えた時には、他より細くなっている部分が全体流量を決める上での制約条件となってしまい、その部分が単位時間当たりに流せる流量以上処理できない。

 工場におけるボトルネックとはまさにこの工程の生産性が、そのボトルネック工程の生産性が制約条件となって、それ以上のワークや加工品の流量(単位時間当たりの加工数)が生産できないことを指す。

(2)ボトルネックのタイプ
 ボトルネックとひと言で言っても、さまざまなタイプ(発生要因)のボトルネックが存在する。例えば、生産設備の処理能力が挙げられる。前工程の処理能力が80個/分、自工程の処理能力が60個/分、次工程の処理能力が100個/分だった場合には自工程の生産設備の処理能力が原因でボトルネックが発生するわけだ。

 同様に、設備だけでなく、人間が生産するか加工に関与した場合であっても、このような条件が適用できる。また、部品の供給不足によってもボトルネックが発生したり、段取り替えが多頻度発生する工程においてもボトルネックが発生する恐れがある。

(3)ボトルネックの弊害
 ボトルネック工程に目を向けてみると、さまざまな弊害が発生していることが散見される。前工程の生産性が高過ぎる場合には次工程に流れ込む前で仕掛かり在庫や使用する資材が積み上がってしまい、置き場所に困っていたりする。次工程の生産性が高過ぎる場合には、次工程が暇そうにしてしまっており、当工程からのアウトプット待ちになってしまい、工程によっての繁閑差が発生してしまう。

 また、ボトルネック工程の改善を行おうとすると、設備の設定の問題か、設備の故障やチョコ停の問題か、人の作業生産性の問題か、人の意識の問題か、などを切り分けて対応をする必要が生じる。

 なによりも、投入した資材に対して計画した通りの生産実績が上がらないことが課題だが、それについては次節で述べる。