前回は設備保全業務の効率化について言及し、製造業の設備保全業務をどのように効率化すればよいかについて解説した。今回は金属加工の製造業などでありがちな「加工する途中の仕掛かり品が工程のどこにあるのか」「どこまで製造が進んでいるのか」「それをどう管理すればよいか」という工程進捗管理について解説する。
工程進捗の「3つの課題」
ものづくりにおいて、受注した製品が工場の中でどこまで加工が進んでいて、どの工程にあるのかは工場を管理する立場からすると、把握しておきたいものだ。特に営業からの特急案件などはその最たるもので、工程のどこまで進んだのか、直接現場に聞きに来る営業がいるくらいだ。
(1)どこまで作業が進んでいるか不明
金属加工した部品を複数組み立てるような金属加工業に代表される多段階の工程を必要とする製造業の場合をイメージしてもらいたい。こうした製造業では、往々にして工程も長く、加工途中の製品がどこまでの工程を終わらせているのかを把握することは、通常の手段(目視や紙の伝票での管理など)では分かりにくいものだ。作業の進捗が分かりにくいとますます工場長や営業は不安になるため、工程のどこを流れているのかを可視化するニーズは常に高い。
(2)どんな作業をするのか不明
工程のどこに流れているのかが分かったとしよう。これを逆の立場、つまり、その工程を担当する側から見ると、手元に流れてきた部品や加工品がどこから流れてきて、次にどこへ持っていけばよいのかが分からないといったことも起こり得る。“運び屋さん”が居たり、ベルトコンベヤーで流れていく場合にはその限りではないが、そうでない場合には次工程が分からないことも、経験が浅い工員ならあり得る話だ。
そして、多品種少量生産の工場などで多く見られるのが、自分の工程でどのような加工を施せばよいのかが明確になっていないことだったりする。かつては自工程は単純な加工であることが多く、削るなら削るだけと明確であった。ところが近年、品種の多さに加えて加工が複雑になっている。1人で複数の工法や加工仕様を選択しながら作業を行う場合には特に加工法や作業内容・加工指示内容が明確に分かっていることが必要だ。
(3)どんな手戻りが起こっているのか不明
工場長やライン長の視点に立って考えてみよう。工程で決められたリードタイムよりも長かったり、品質トラブルによって加工のやり直しなどの手戻りが多発していることが報告された場合に、どの工程でどの程度の時間がかかっているのか把握したいと思わないだろうか。当然、ラインの中でそうしたボトルネックになり得る箇所は存在するのが常なので、工程別に加工時間を把握。品質トラブルや手戻りなどの過剰なプロセス時間を必要としていないか管理して、改善に生かしたい(図1 工程管理における課題)。