国内有数の製薬会社であるアステラス製薬は、2021年、未来のビジネスモデルに向けた「経営計画2021」を策定した。経営計画の中で示されているのは「進化した戦略」「意欲的な目標」「変革を引き起こす実行力」、そして科学の進歩を患者さんの「価値」に変える「VISION実現への揺るぎない決意」だ。経営計画達成のために同社はどのような取り組みを進め、また、戦略目標達成に向け、DXはどのような役割を果たすのか。代表取締役副社長を務め、経営戦略担当でもある岡村直樹氏が詳しく解説する。

※本コンテンツは、2022年5月25日(水)に開催されたJBpress/JDIR主催「第2回経営企画イノベーション」の特別講演Ⅲ「アステラスの経営計画」の内容を採録したものです。

世界に羽ばたく製薬会社が掲げた価値創出のための「VISION」

 アステラス製薬株式会社は、2005年に山之内製薬株式会社と藤沢薬品工業株式会社が合併することにより発足。2021年度 の年間売り上げは約1兆3000億円、コア営業利益も約2500億円と、日本で3指に入る製薬会社である。

 合併当初はその売り上げのほとんどが日本国内で占められていたが、合併から15年が経った現在は、日本の占める割合は約20%にとどまり、世界最大の医薬品市場であるアメリカのシェアが40%を超えるなど、世界70カ国以上で事業を展開するグローバルな製薬企業へと成長を遂げている。

 2015年、合併を契機としてワールドワイドな視野を持ち成長を続けてきたアステラス製薬は、未来に向けた新たな「VISION」を策定した。このVISIONについて、同社の代表取締役副社長を務める岡村直樹氏は次のように語る。

「当社は『変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの「価値」 に変える』ことをVISIONとして掲げています。このVISIONを達成するには、持続的な成長のために最先端のサイエンスを追求し、患者さんに価値をもたらす医療ソリューションの創出を目指さなければなりません。全世界の約1万5000人を超える従業員が共通認識を持って業務に当たれるよう、このVISIONを策定しました」

 では、岡村氏の言う「価値」を創造していくためには、どのような思考を持つことが必要なのか。ここで鍵となるのが、ハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ポーター氏が提言した価値の定義である。

「患者さんにとって本当に重要な『アウトカム』を分子に置き、そのアウトカムを提供するためにヘルスケアシステム全体が負担しなければならない『コスト』を分母として、価値を分数の形で定義します。このとき、薬屋の常としてどうしてもアウトカムを大きくすることを考えがちですが、アウトカムを大きくすることだけが価値の向上に結びつくわけではありません。分母であるコストを小さくしていけば、結果として価値は高まっていきます。こうした定義にもとづいて私たちは価値を創造しており、その価値を患者さんにお届けすることにまい進しています」