コロナウイルス感染症の猛威により、日常が大きく様変わりした現代。各業界でDX推進が叫ばれる中、物流業界もDXが加速している。物流データプラットフォームの構築、API(Application Programming Interface=外部アプリケーション連携機能)の活用、モノの動きや商品情報の見える化など、ウィズコロナ、アフターコロナ時代を生き抜くために知っておくべきDXの現状と今後の展開や課題について、日本大学教授で物流エコノミストでもある鈴木邦成氏に聞いた。

※本コンテンツは、2022年4月26日に開催されたJBpress/JDIR主催「第1回物流イノベーションフォーラム」の基調講演「物流DXネットワークの現状と今後の展開及び課題」の内容を採録したものです。

物流データプラットフォームの構築をDX推進の流れが後押し

 時代がウィズコロナへと変容したことにより、コロナ禍以前には考えられなかったような状況が、今、当たり前のものとしてわれわれの周りにはあふれている。

 その代表的な例が「遠隔化」だ。企業は3密を避けるためにリモートワークを奨励。さまざまな会議も、パソコンを通して遠隔で行うのが通例となってきた。病院では院内でのコロナウイルス感染を防ぐために遠隔診断が取り入れられ、大学では遠隔授業が多くなったとも聞かれる。鈴木氏はこの現状をどう捉えているのか。

「さまざまな場面での遠隔化に対する取り組みは、物理的距離を克服する仕組みへのニーズが拡大していると言い換えることができます。これがヒト、モノ、コトがつながるDX社会の推進を後押ししているとも言えるでしょう。物流業界においても、DXを推進することによる遠隔化と省人化が非常に加速しています」

 物流業界におけるDX推進の中核となっているのが、物流データプラットフォームの構築だ。これは国土交通省が旗振り役をしてきたスマート物流サービス(SIP)の中で以前から唱えられてきたものであり、物流業界では「古くて新しいテーマ」とも言える。スマート物流と、スマート物流の土台となる物流標準化。この2つを推進する流れはこれまでもあったわけだが、近年、DXの流れの中でその勢いが増してきた。

 輸送手段の共有化がその良い例だ。一昔前は車と荷物をマッチングすることにより、積載率や稼働率を上げて物流の効率化を図る取り組みが行われてきた(求貨(荷)求車システム1.0)。当時はマッチングのためのWebサイトが40以上運営されており、激しい競争が行われていた。

「求貨求車システムは夢のシステムともいわれていました。しかし、数多くあったWebサイトも徐々に淘汰され、生き残れたのは主要数社をはじめ少数でした。その理由は仲介業者がトラックや貨物の情報(データ)を他者に渡さなかったことにあります。そのため、国土交通省が目指した物流データプラットフォームの概念が育つことがありませんでした」

 国土交通省にとってプラットフォームの構築は、労働力不足やニーズの多様化、環境への対応などの問題を解消するための喫緊の課題といえる。これまでクリアすることのできなかったこの課題が、コロナ禍によって一気に解消へと進んだ。求貨求車システムについても、近年になって時代に合わせたビジネスモデルの刷新もあり、新規事業参入の増加を見るようになった。

「私は『求貨求車システム2.0』と位置づけていますが、近年はBtoB型のデジタルプラットフォームの構築が進んでいます。加えて、インターネット通販系のBtoCの会社がプラットフォームの構築に非常に熱心で、物流データプラットフォーム構築の推進に一役買っています」

 近年、求貨求車システムが進化することにより、工場の出荷情報や物流センターのバース予約情報、納品先の納品情報などがつぶさに共有されるようになった。それぞれの物流拠点で重要な情報をシェアできる仕組みが出来上がってきたわけだ。