リアルとデジタルをマージする、web3におけるアーティストのポテンシャル
パネルディスカッション2組目には、m-floなどで活躍するラッパーで、自身のファッションブランド「AMBLISH」も展開するVERBAL氏、株式会社Fictionera代表でミュージシャンでもある草野絵美氏が登壇した。
モデレーターのJeason Ma氏は、web3クリエータープラットフォームであるOP3Nの共同創業者でもあるが、「NFTは暗号資産と文化が交差するものであり、web3におけるアーティストのポテンシャルは非常に高い」という見解を示し、VERBAL氏、草野氏がどのようにNFTに関わっていったかを掘り下げた。
VERBAL氏はまず、NFTの有用性に驚いたという。2020年後半にJPEG作品を購入し、プロジェクトのコミュニティーに参加してメタバースにNFTを表示することができた、という自身の体験から「リアルとデジタルがマージする楽しさ」を実感し、これが参入のきっかけになったと語った。
自身のジュエリーブランド「AMBUSH」のNFTコレクション「POW!」のキーワードは「コミュニティビルディング」だ。もともと「POW!」は、カスタムジュエリーとしてデザインし、仲間うちに配るうちに評判になり、世界的なブランドに成長したものだ。NFTとして最初につくった99個の「POW!ENERGON」はファッション界、音楽界の友人に配布(エアドロップ)し、次に一般向けに2022個の「POW!REBOOT」を発行。そして、今年の3月には「POW!GLOW IN THE DARK」を、自社で開発しているメタバースでゲームをクリアした人だけが発行できる形でリリース。いずれも数分のうちに完売している。
このメタバースでは「AMBUSH」のNFTを持つ人が、買い物やライブストリーミングが楽しめる空間を実装中であり、VERBAL氏は「ここでクリエイターエコノミーを広げていきたい」と語る。
草野氏は、コロナ禍で音楽イベントが開催できなくなっていた昨年4月、NFTに音楽ビデオを出品した。「その頃はまだ分からないことも多かったのですが、昨年の夏に、当時8歳の息子が『NFTに出品したい』と夏休みの自由研究にコレクションを制作し始めました。息子を手伝うことで、結果的に私もweb3の世界に入っていったのです」と振り返る
草野氏の息子「Zombie Zoo Keeper」のプロジェクト「Zombie Zoo」は、ミュージシャンのスティーブ・アオキが購入したこと、FWB(Friends With Benefits)というDAO(Decentralized Autonomous Organization:ブロックチェーン上の自律分散型組織)で話題になったことから評判になり、最大4ETHで取引されるまでになった。今では日本で最も知られるNFTコレクションだ。「彼の250作品を使って、どんな世界をつくりたいか話し合い、いろいろなコラボレーションを実現させています」
草野氏自身もこの経験から学び、親友でイラストデザイナーの大平彩華氏とともに「Shinsei Galverse(新星ギャルバース)」というNFTプロジェクトを始めた。「かっこいい女性が主役のSFアニメをつくる」という目的で、8888体のキャラクターを出品し、6時間で完売。世界最大のNFTマーケットプレイスであるOpen Seaで売り上げランキング1位を記録した。草野氏は「制作資金がそろったので、これからスタジオに掛け合い、アニメーションをつくっていきます」と今後を語った。
2つのセッションで語ったアーティストに共通することは、「ワクワク感」ではないだろうか。新たな世界に対する感動が、アートだけでなく、さまざまなビジネスの原動力になるだろう。