生産進捗管理ボードを中心とした現場の改善や意識の活性化に活用しよう

 改めて生産進捗管理ボードの目的を考えてみたい。計画通りの生産が行われているかを見ること(進捗管理)だけでなく、遅れ状態を把握し、遅れをカバーするための対応を行うとともに、遅れ原因に対する改善策を実施する必要がある。
 遅れの原因としてはさまざまな理由があるが、例えば

・受注が集中し作業指示が交錯した結果、生産現場にうまく情報が伝わらずに遅延してしまった
・得意先の要望で短納期で受注し、無理に製造を進めたため品質が悪化。完成品数量に不足が発生してしまった
・中途で採用した、または別工程から異動させた新人の作業効率が悪く、大幅に工程が伸びてしまった
・顧客の要求事項が不明確なまま受注し、うまく製造できず再製作となった


 こういった事態が発生した場合、もともと計画していた通りに生産が追い付かず、遅延となってしまう。そのため、生産進捗管理ボードを中心とした日常的な改善を回すことが求められる。

生産進捗管理ボードを中心とした日常的改善

 売上計画にのっとって、工場では生産計画が組まれる。売上を上げるための商品を日々生産ラインで製造しているため、計画を遵守できないと、売上の低下、つまり会社の業績を悪化させてしまう。そのため遅延が想定される場合は、まずは暫定策で応急処置を行う。そしてタイミングを見計らって恒久策をとるようにする。この場合の恒久策というのは、遅れ要因を明確化し、対策管理表でPDCAサイクルを回すことである。

 ここで実施するべきことは、問題点への対策情報の共有化である。具体的には問題点、原因、対策内容等を記入した管理表によって工場全体で起きていることを可視化する。このような問題点を工程ごと、設備ごと、製品ごとだけでなく、工場全体で横断的に共有すると、全体最適として解決策を考えることができる。

 また+αの工夫として、顧客視点を取り入れることも有効と考える。生産進捗管理ボードにお客様を意識する工夫(仕組み)を加える。 例えば、工場の出荷情報としてどこに、何の製品を、いくつ、いつ出荷するというような情報を加える。作業者は、普段意識しないお客様(出荷先)の名前を耳にするため、その姿が頭に浮かぶようになる。そうすることで、自身の作業がお客様にダイレクトに影響すると意識でき、魂が入ったものづくりができるようになる。 最後に改めて、生産進捗管理のポイントを整理する。

生産進捗管理のポイント
【進捗把握のポイント】
・見込み生産や受注生産等の生産形態に応じて、工場単位、工程単位、製品群単位、品番単位、注文単位の管理粒度を設定する
・受注生産の進捗管理は、全体の進捗と個々の進捗の両面を管理する
・可能な限り短い期間ごとに進捗を把握する

【問題に対する対策のポイント】
・進捗把握での問題点は先送りせず、問題が小さいうち、シンプルなうちに対策を協議・実行する

【その他のポイント】
・進捗管理の主体は現場監督者が中心となりスタッフはそれを支援する
・基本的に現場が計画通りにモノを作るという意識を持つ

 生産進捗管理ボードの遅れは改善の種と考え、日々の計画遵守だけではなく、継続的に納期遵守できるような取り組みにつながるよう活用してほしい。

コンサルタント 白濱匡晋(しらはま まさくに)

生産コンサルティング事業本部
プロセス・デザイン革新センター
チーフ・コンサルタント

生産財、サービス分野における事業戦略立案、ビジネスプロセスマネジメント、品質保証体制構築、SCM改革を専門領域として活動中。経営目標の達成に向けたQCDバランスを適正に保つマネジメント機能を設計することを課題とし、コンサルティング活動を行っている。