アプリラボ代表の菅野壮紀氏

 飲食店の中にはさまざまな数字が存在する。これが系統として整理されると「データ」となる。これをきちんと把握することによって、飲食業の接客や経営で改善するべきポイントが見えてきて、的確なアクションをもたらす。

 今回はこうした飲食店の数字を次々と発掘して、飲食店の経営支援を行っているアプリラボ(本社/東京都千代田区、代表/菅野壮紀〈かんの・たけのり〉)の取り組みを紹介したい。同社は2007年10月の創業以来、「K1(けいいち)くん」というサービスを提供し、その機能の深化と普及に努めている。

飲食業のDXの意義は「接客」に役立てること

 アプリラボ代表の菅野氏は1982年8月生まれ。父の影響で小学生のころからパーソナルコンピューターに親しみ、将来はコンピューターに関係した仕事をしたいと考えていた。学生時代に将来の独立に備えて「営業力を磨こう」と、飲食店でアルバイトを行ったことが飲食業界との出会い。ここで飲食店の仕事の「奥深さ」に目覚めた。

 当初、菅野氏は飲食店の営業とは「注文を取る」ことだと思っていたが、実際は「お客さまから求められていることを、求められているタイミングで行う」ということだと知った。そこで、自分が将来、手掛ける仕事を「飲食業界を支援するIT企業」と定めて、その思いを温めた。学卒でIT企業に入社して、銀行のサーバーの運用や開発に従事。

 そして、25歳の時、菅野氏オリジナルの「K1くん」を立ち上げた。

 「K1くん」は「タイムカード」からスタートした。タイムカードはあらゆる店で使用されている管理システムだからだ。そして、このサービスを継続しているうちに、これらのシステムの中に「休憩時間を入れたい」「シフトをコントロールしたい」といった顧客の要望があり、その機能を加えていった。さらに売上管理を取り入れて、仕入れ管理、FL分析(FはFood:原価、LはLabor:人件費)も加わった。

 「K1くん」を飲食店にとってどのような存在にしたいのか。菅野氏はこう語る。

「ずばり、冷蔵庫のような存在。冷蔵庫は食材の品質を保持するためのもので、今や当たり前の存在。ただし、冷蔵庫があれば料理人が不要ということではない。冷蔵庫の中で品質が保持された食材をどのように使うか、ということが問われる。『K1くん』の場合は飲食店の接客にどのように役立てるといいか、ということが重要だと考えています」

 菅野氏が考える飲食業のDXの意義とは、すべからく「接客に役立てる」ということだ。例えば、今、入店の問い合わせをしてきた人物は当店とどのような関係があるのか、利用歴があるのか、あればどのような食事をしたのか。また、今、食事をしているお客はどのような心理状況なのか、どのような対応をすると歓迎されるか――。このように、顧客情報が、顧客満足を高めるための接客のアクションにつながるように考えられているのだ。

「K1くん」を開いておくことで従業員の誰もがお客の状況を把握することができる