有害コンテンツから利用者を保護するようSNS(交流サイト)に対応を義務づける動きが世界で広がる中、イーロン・マスク氏が買収を計画するツイッターにもその影響が及びそうだという。米ウォール・ストリート・ジャーナルが5月11日に報じた。
欧州や米国などで新規制導入の動き
欧州連合(EU)の欧州委員会は2022年4月23日、巨大IT(情報技術)企業に違法コンテンツなどへの対応を強化するよう義務づける「デジタルサービス法案(DSA)」で、欧州議会などと合意したと明らかにした。違法コンテンツの削除を義務づけるほか、オンライン広告についても規制を課す。
児童への性的虐待などの違法コンテンツやヘイトスピーチ(憎悪表現)、偽情報、違法商品・サービスなどの速やかな削除を義務づける。また性別や人種、宗教などの個人情報を基にしたターゲティング広告を禁じる。子供を対象にしたターゲティング広告も禁止する。違反した場合は、世界年間売上高の最大6%の罰金を科される可能性がある。今後、欧州議会と加盟国による最終合意を経て、早ければ22年内に施行される見通しだ。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、EU域内ではすでに国内法を整備した加盟国もある。ドイツはここ数年、ヘイトスピーチなどの違法コンテンツを迅速に削除するようSNS企業に義務づけており、罰金も科す。
英国のオンライン安全法案は違法コンテンツへの対応に加え、自傷行為や摂食障害を助長するものなど、特定カテゴリーのコンテンツへの対応を義務づけることを狙っている。
米国では、オンラインコンテンツへの対応に関する複数の法案が提案されている。また、米政府は利用者の投稿内容に関してネット企業の法的責任を免除する「通信品位法230条」を問題視している。ジェン・サキ大統領報道官はマスク氏によるツイッター買収計画の発表を受け、「バイデン政権は引き続き通信品位法230条の撤廃を主張し、テクノロジー企業に対する反トラスト法(独占禁止法)や透明性に関する取り締まりの強化を支持している」と述べた。
マスク氏、トランプ前大統領のアカウント復活示唆
一方で、マスク氏は言論の自由を守る姿勢を示している。22年5月10日には、ドナルド・トランプ前米大統領のアカウントを永久凍結するツイッターの措置を覆す考えを明らかにした。同氏は「永久凍結は道徳的に間違った判断であり、ツイッターへの信頼を損ねた」と指摘。「誤った、もしくは悪質なツイートがあれば削除するか非表示にするべきだが、一時停止が妥当であり、恒久的な禁止は適切ではない」と述べた。