同氏は買収提案にあたって「ツイッターは世界の言論の自由の基盤になり得るが今のままではその責務を果たせない」と主張。22年4月26日の投稿では、「単に言論の自由が法に一致すると言っているだけだ。法をはるかに超えた検閲に反対する」と、ツイッターが導入している検閲的なコンテンツ管理体制への不満を吐露した。

 こうした同氏の発言に対し、EUのブルトン欧州委員(域内市場担当)はウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、「投稿コンテンツの管理に関し、マスク氏も欧州域内のルールに従う必要がある」とくぎを刺した。

マスク氏「各国の法律を順守することが望ましい」

 だが、マスク氏はこの数週間、ツイッターの運営方針について規制当局のルールを順守する意向を示すようになった。22年5月9日にはツイッターへの投稿で「各国の法律を順守することが望ましい」との考えを表明した。

 ロイターなどによると、マスク氏はこの日、ブルトン欧州委員とテスラのテキサス工場で面会した。ブルトン氏はマスク氏との面会動画をツイッターに投稿。この中で、マスク氏にEUの新規制「DSA」について説明したと明かし、「EUが何をすべきかという点について、マスク氏と私の考えは合致している」とコメントした。これにマスク氏は「私の考えと完全に一致している」と返答した。

広告業界も期待を寄せる

 最近の言動の変化を受け、広告業界はマスク氏に期待を寄せているとロイターは報じている。同氏は当初、「言論の自由は民主主義の基盤であり、ツイッターは人類の未来に不可欠な問題が議論されるデジタル公共広場だ」と主張し、広告収入に依存する事業モデルに疑問を呈していた。

 ところがマスク氏が最近、投資家に見せたスライドによると、同氏はツイッターの世界利用者数が足元の2億2900万人から、28年には9億3100万人となり、広告収入は2倍以上の120億ドル(約1兆5400億円)に達すると予測している。それまで同氏の発言で悲観的になっていた広告業界は、一転して楽観的になったという。

 マスク氏はツイッター上で日々、新サービスに関するアイデアをつぶやいている。同氏がオーナーになれば開発が加速し、ツイッターに現在不足しているものが補われるとみられている。「サービス品質が向上し、新たな利用者を引き付け、より良いマーケティング環境の基盤になる」と期待する業界関係者も少なくないという。

 (参考・関連記事)「ツイッター、マスク氏の「言論の自由」で広告離れか | JDIR