また、米アマゾン・ドット・コムも22年1月から実施する予定だった再開計画を変更。オフィス勤務社員の出社日数を固定せず、出社の判断は各部署の管理者に任せるとする新方針を打ち出した。
アマゾンのアンディ・ジャシーCEOは社員宛てのメッセージで「今後もほとんどの仕事をリモートで行うチームもある。オフォス勤務と在宅勤務を組み合わせるハイブリッド型を選択するチームある。オフォス勤務であることが顧客にとって最善と考えるチームもある」とし、「週に何日あるいは何曜日に出社する必要があるかは、会社としてあえて決めない。勤務体制は管理職であるディレクターがその幹部やチームとともに決める」と説明した。
オフィス協業重視も社員は「柔軟な働き方」要求
アマゾンなどのIT大手はオフィスでの共同作業を重視する傾向がある。アマゾンは当初「オフィスを中心とする企業文化への回帰」を掲げていた。同社のアーディン・ウィリアムズ人材開発担当副社長は20年にウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、「人とつながる能力や、チームが目的のために協働する能力はリモート環境でも可能だが、自然発生はしにくい」と指摘。「再びオフィスに戻る日を楽しみにしている」と述べていた。
だが、米国における労働市場の競争激化を背景に、IT大手は社員の声を無視できなくなっている。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ハーバード大学大学院経営学研究科のセダール・ニーリー教授は「社員は柔軟な働き方を求めており、それを提供しない企業は人材を失う」と指摘している。
米マサチューセッツ・ミューチュアル・ライフ・インシュアランスが今夏に米国労働者1000人を対象に行ったアンケート調査では、41%が「出社勤務の再開を待ち望んでいる」とした一方で、29%が「ハイブリッド勤務や在宅勤務を好む」、10%が「出社再開を良いとは思わない」と回答した。
米シリコンバレーや米シアトルなど、IT大手が本社やオフィスを構える都市の住宅価格が高騰していることも出社反対派が増えている一因と考えられる。コロナ禍に伴う在宅勤務への移行を機に、米テキサス州などの他州に転居した人も少なくないと指摘されている。
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