2年近くに及ぶコロナ禍を経て今なお、人々の行動は抑制傾向にあり、アパレル業界ではEコマース(EC)の重要性が改めて意識されている。そんな中、ユナイテッドアローズは早くからECに取り組み、LINE接客など新たなデジタル活用に挑戦してきた。今年4月に同社のCDOに着任した藤原義昭氏が考えるアパレル業界DXの勘所は何か。大手アパレル小売り向けのコンサルティングを手掛けるココベイの磯部孝氏が掘り下げていく。
※本コンテンツは、2021年11月17日に開催されたJBpress主催「第6回 リテールDXフォーラム」の特別講演Ⅰ「ユナイテッドアローズが考える『今、必要なデジタル化の取り組みと意味』」の内容を採録したものです。
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「人と人」の延長上にあるLINE接客
磯部 ユナイテッドアローズは今年4月にDX推進センターを新設し、その下にデジタルマーケティング部、情報システム部、自社EC開発室を置かれました。ミッションからお聞かせいただけますか。
藤原 DX推進センターは、サプライチェーンから顧客体験まで全てを対象として、データとデジタル技術を使ってお客さまの満足を上乗せしていくことをミッションとしています。当社は「本部制」を敷いており、ものづくり、マーケティング、店舗の運営をワンセットで行っています。DX推進センターは、その個々の部署に対してではなく、ユナイテッドアローズ全体としての視点を持って横断的に見ていく組織です。
磯部 2021年3月期の決算時の中期経営計画では、主力事業の収益改善策として「販売員参加のオンライン接客の強化」を挙げています。その例として、UNITED ARROWS green label relaxing(ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング)のLINE接客がありますね。非常に好調で注目を集めていますが、DX推進センターが主導したのでしょうか。
藤原 実は、LINE接客は売り場の発案です。新たに要員を配置したりするなど本部として動きがあったわけではなく、販売員と一緒に「とにかくやってみよう」というチャレンジでした。プラットフォームとしてLINEを使用した理由も、お客さまも販売員も普段から使っているツールだからです。
私たちの強みは、やはり販売員の接客です。お客さまにご満足いただいた結果として顧客単価が上がる、ということを愚直にやってきた会社ですから。LINE活用を考えたとき、Botや一斉配信ではなく、今まで店舗でしてきたのと同じように個々のご相談やお悩みに丁寧にお答えするという形に収まりました。テキスト中心になるといったLINE特有の課題はありますが、「密なコミュニケーションをしっかりやる」という根元は同じです。
店舗におけるお客さまの購買率は1割以下でしたが、LINE接客ではご利用後ほぼ購入いただけています。これもコミュニケーションの重要さを物語る一例だと受け止めています。
磯部 LINEというデジタルツールを介したとしても、結局は販売員とお客さまの「人と人」の関わり方が肝要であり、そこがしっかりとしていれば売り上げにもつながるということですね。