北海道に約200店舗を展開するドラッグストア「サッポロドラッグストアー(サツドラ)」。持ち株会社であるサツドラホールディングスには、小売業以外にもう一つの顔がある。会員数約200万人超、北海道民の約2.5人に1人が持ち、世帯普及率は71%という地域共通ポイントカード「EZOCA(エゾカ)」を中心にした地域マーケティング事業の運営だ。代表取締役社長 兼 CEOの富山浩樹氏は、課題が山積している北海道を「課題解決先進地域」に変えるべく、DXを通じた地域活性化を実現するプラットフォームづくりに挑む。

※本コンテンツは、2021年11月17日に開催されたJBpress主催「第6回 リテールDXフォーラム」の特別講演Ⅴ「DXを通じた小売業と地域の新たな価値創造」の内容を採録したものです。

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小売業から地域コネクティッドビジネスへの転換

 EZOCAには、サツドラに加え、スーパーマーケットやホームセンターなど同じ生活圏にある流通業者の他、北海道で知名度の高い地域密着企業を含む164社の飲食店やカラオケ店などが幅広く加盟する。また、Jリーグチームの北海道コンサドーレ札幌をはじめとする地域スポーツチームや自治体とも連携している。

 EZOCA事業を運営するのは、富山浩樹氏が代表取締役会長 兼 CEOを兼務するグループ会社のリージョナルマーケティングだ。同社は決済サービス事業にも取り組み、電子マネー決済サービスとして「EZO(エゾ)マネー」を企画・発行・運営する他、「WeChat Pay(ウィーチャットペイ)」「Alipay(アリペイ)」「LINE Pay(ラインペイ)」「PayPay(ペイペイ)」などのQRコード決済サービスの代理店事業を行っている。

 富山氏は「EZOCAを単なるポイントカードで終わらせず、北海道ならではのプラットフォームづくりにつなげていきたい」と語る。

 サツドラホールディングスでは、ドラッグストアと地域マーケティングを2つの事業の柱とし、さまざまなビジネスを展開。グループ全体としては「ドラッグストアビジネスから地域コネクティッドビジネスへ」というビジョンを掲げ、「コネクティッド」という新しい価値を創造することを目指している。

 具体的なビジョンとしては、店舗を暮らしの窓口と捉え、店舗の従業員をライフコンシェルジュとして、物だけでなくサービスも扱うことで、地域のあらゆるヒト・モノ・コトをつないでいく。

「ヒト・モノ・カネの他に第4の経営資源といわれる情報データ、そしてブランドを中央(首都圏)へ流出させず、地域にとどめて循環させる仕組みをつくりたいと考えています。道外(地域外)から入ってくる資源も必要に応じて取り込み、道内で閉じてやった方がいいことは独自に進める。そのイニシアチブを取っていくのがわれわれの役割です。官公庁だけではできないことを民間のビジネスとして実行し、この地域にコミットしていくことを目指しています」

 「課題先進地域」といわれる北海道は、人口減少も全国の平均より10年早く進み、2025年には半分以上の市町村が人口5000人以下の過疎エリアになるといわれている。こうしたことは、いずれは全国どの地域でも起こり得る問題だ。

「既存のマーケットが縮小する中、新しい社会システムをつくり出すことが必要です。まずは北海道を、そして日本、世界を変えていく。そのためにデジタルテクノロジーを活用していきます」