デジタル分野における世界初の経営陣コミュニティである「CDO Club」。日本では2017年に独立機関として一般社団法人CDO Club Japanが発足し、企業、政府、自治体、非営利団体のデジタル改革促進を目指し、CDOの普及啓蒙、活性化、教育、交流、人材育成、人材提供、アドバイス(コンサルティング)を行っている。
本セッションでは、CDO Club Japan代表理事の加茂純氏と、会員企業である出光興産と東京海上ホールディングスの2社のCDO(Chief Digital Officer=最高デジタル責任者、Chief Data Officer=最高データ責任者)が登壇。各者のプレゼンテーションの後、「日本企業におけるDXのポテンシャル」について意見を交わした。
※本コンテンツは、2021年9月13日に開催されたJBpress主催「第10回 DXフォーラム」のプレゼンテーション&パネルディスカッションの内容を採録したものです。
日本企業がデータ活用・デジタル活用に乗り遅れた理由
一般社団法人CDO Club Japan 代表理事 加茂 純氏
「DATA or DIE——データを活用するか、市場から消えるか」
これは、CDO Club Japan代表理事の加茂氏が、日本企業の将来を示すフレーズとして提示したものだ。それほど、日本のデータ活用・デジタル活用の現況は切羽詰まった状態にあるという。
「今となっては信じられないことですが、1980年代まで日本の経済は『アメリカを抜くのでは』といわれるほどの勢いがありました。アメリカの企業経営者も日本企業を研究したといわれます。ところが、1995年前後にインターネットがビジネスに広く普及すると状況は一変。
シリコンバレーを中心にデータ蓄積・活用、グローバル化によるビジネスの大成功が生まれ、その後、2000年ごろにGAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)が世界中を席巻したのはご存じの通りです。日本の“失われた20年”も、その頃から始まりました」(加茂氏)
GAFAM成功の共通項は、デジタルやデータ活用によるサービスや商品提供、そしてプラットフォーム、エコシステムといった新たな概念をビジネスに取り入れたことにある。インターネット普及以前に日本が成功した要因には、同質カルチャー(以心伝心、あ・うんの呼吸)、暗黙知の重視(技は教わるのでなく見て盗め)、改良のうまさ(オリジナルの改善)などが挙げられるが、新しく迎えたデータとデジタルの世界では、同質カルチャーや暗黙知といったメリットが、一挙にデメリットに転じた。
「データ活用が全くできていない状況だからこそ、日本企業にはCDOという存在が求められています」(加茂氏)