管理者育成を早期に実現するための処方箋

 日本人赴任者への取り組みとしては、
・赴任前に実践を通じた現地マネジメントへの適性評価を行うこと
・赴任期間中のミッションを明確化すること
・現地での指導フォロー体制を構築すること

 が考えられる。

 フォロー体制としては現地だけでなく、日本サイドでも教育機会の提供やメンタルケアも含めてフォローすることが重要である。

 現地管理者の強化は、管理者の役割や行動の制度設計だけでなく、具体的に丁寧に教える、実際の現場では手取り足取りやり方を教え、フォローする、そして任せるという手順を踏む。個人を理解した上で教育方法を考えることが前提になるが、基本的な強化方法は日本と変わらないと思う。

 ただし、1つ気を付けなければならないのは、現地の人は昇格、昇進に対する意欲は日本人以上に少ないということだ。このことを心得ておく必要がある。現地の人を期待して昇格させるのではなく、できるようになってから昇格するという人事制度になっていないと、昇格しても期待通りの効果は得られない。

 教育については、Off JTとOJTを活用することになるが、注意すべきは必要なときに必要な教育を実施するということである。いずれ役に立つから、あるいは知見を広めるためという教育は身になるものは少ないため、実践に必要な教育に絞り、速やかにタイムリーに実施していくことが重要だ。

 この教育、育成を実践する1つの取り組みとして、方針管理(目標管理)と日常管理の仕組みを改めて見直し、その実効性を高めることが考えられる。実効性を高める取り組みの過程で既存管理者が成長するとともに、新たな候補者を発掘し、訓練の場をつくることで次なる候補者が育ってくることになる。

 このような取り組みは一過性のものであってはいけけない。取り組みを継続することで、日本人赴任者や現地管理者が育ち、有機的に連携したマネジメントを実現できるのである。

 第7回はタイの製造拠点における管理者育成について説明した。次回は人づくりという観点で「方針管理や日常管理の有効性を高めること」について具体的事例を交えて整理する。

コンサルタント 角田賢司(つのだ けんじ)

生産コンサルティング事業本部
プロセス・デザイン革新センターセンター長
兼 デジタルイノベーション事業本部 シニアコンサルタント

IEをコア技術として収益向上のコンサルティングに取り組んでいる。自動車(部品)、化学プラント、樹脂成型、建材、食品等、多業種で収益向上の支援を実施。現場の生産性向上、品質向上、調達コストダウンや在庫削減等複数テーマを同時に展開、マネジメントの支援を行う。近年はタイ・中国等の製造拠点支援として生産性向上や品質向上の成果実現と併せ、マネジメントの仕組みづくり、ローカル人材育成を実践