中国当局による公表文書の内容

 このような状況下、中国の金融監督当局(銀監会、証監会)や中国人民銀行などが合同で、9月15日(文書の対外公表は24日)、「仮想通貨取引における誇大広告のリスクのさらなる防止と処分に関する通知」という文書を発出しました。

 この文書はまず、「最近、仮想通貨取引の誇大宣伝活動が増加し」、「ギャンブル、違法な資金調達、詐欺、ピラミッドスキーム、マネーロンダリングなどの違法および犯罪活動を繁殖させ、人々の財産の安全を深刻な危険にさらしています」と書かれています。このように中国当局は、暗号資産を巡る「誇大広告の増加」を問題視しています。

 そのうえで、「ビットコイン、イーサリアム、テザーなどの仮想通貨」について、「合法ではなく、使用すべきではなく、使用することもできません」「仮想通貨関連の事業活動は違法です」と宣言されています。加えて、「海外の仮想通貨取引所がインターネットを介して中国人居住者にサービスを提供することも違法です」と明記されています。

 さらに、「仮想通貨取引の誇大宣伝のリスクへの対処」を掲げ、地方政府による暗号資産取引に関する誇大宣伝の取り締まりを強化すると書かれています。加えて、金融機関が暗号資産関連のサービスを提供することや、企業が「仮想通貨」などの文言を用いた広告を打つことなども禁止しています。なお、この文書発出に先立って、中国当局は、中国国内のビットコインのマイニングも禁止する方針を打ち出しています。

中国当局の狙い

 この文書が示す通り、中国当局の狙いは、技術的には完全には止めにくい国内での暗号資産取引について、取り締まりや罰則の強化、関連する金融機関や企業への締め付けの強化によって実効性を高めること、および、特に誇大宣伝に焦点を当て、これを止めさせることにあります。

 実際、中国でも、金融リテラシーの高くない層を狙い、「値上がり益が期待でき、いざとなれば支払いにも使える」といった謳い文句で投資を募る話を聞きます。もちろん、これはひどい宣伝です。「価値の変動」と「支払いに使える」は相反するものであり、「自分が使いたい時になると都合良く価値が安定してくれる資産」など、あるわけが無いからです。

 とはいえ、中国のスタンスは、他国に比べればやはり厳しいと言えるでしょう。他国では基本的に、「暗号資産に投資をする人は、そのリスクを十分認識すべきであり、誤ったリスク認識に誘導するような広告宣伝などは行わせない」という方向での対応が採られることが多く、暗号資産取引自体を禁じる国々は少数派です。これに対し、中国はさらに踏み込んで、暗号資産の取引そのものを禁止している点が特徴です。