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 金融分野への参入の新しい形として、BNPL(Buy Now Pay Later)が注目されている。これは、デジタル化時代が生んだ金融サービスとも言える。一体どんなサービスなのか。元日銀局長の山岡浩巳氏が解説する。連載「ポストコロナのIT・未来予想図」の第54回。

 金融の基本的な業務の一つが与信、すなわち「お金を貸すこと」です。このサービスの提供においては、預金を取り扱う銀行が主な役割を担ってきました。この大きな理由は、預金を通じて貸出原資を大規模に集められる銀行の特性と、銀行の情報収集および処理能力にあります。

 銀行の貸出先の多くは銀行に口座を持っていますので、銀行は貸出先の資金の出入りを把握できます。加えて、貸出先から入手する貸借対照表や損益計算書、担保などの情報も活用しながら、それぞれの借り手の信用リスクがどの程度かを審査していくわけです。また、銀行口座や担保などの情報が入手できないリスクの高い借り手向けには、比較的高い利息を取る専門のローン業者が存在しているという事情も、ほぼ世界共通です。

 これに対し、近年、BNPL(Buy Now Pay Later)と呼ばれる新しい与信サービスが各国に登場しています。これは、ネットショッピングの利用者などによる「後払い」を可能とするサービスです。スウェーデンのBNPL企業Klarna(クラーナ)社の時価総額5兆円超えや、米国PayPalによるPaidy社の買収など、この分野への関心が高まっています。