10年の時間軸で「3ウエイブ」でシフトさせ続けることが重要

 先ほどの戦略ポイントの中で「10年の時間軸・3ウエイブ」というキーワードを挙げました。これについて補足します。

 今の時代、一つのトランスフォーメーションを成し遂げるには「10年の時間軸」で考える必要があります。しかし10年先までには新たな事業・新たなポートフォリオへと変えていく、新しいコアコンピタンスを獲得していく必要があります。

10年の時間軸・3ウエイブ
①コア事業のディフェンス
②成長事業へのリモデル
③成長オプション・ネタの創造

 直近で、今の事業の中で徹底して稼ぐための投資(①コア事業のディフェンス)を行い、そこで得たキャッシュを一定程度市場の成長が見通せる領域への投資(②成長事業へのリモデル)に使う。それと同時に、10年先を見据えたR&D的な投資(③成長オプション・ネタの創造)で、将来のコア事業になり得る領域を探索する。

 10年の時間軸で企業の収益基盤と将来の成長を支える投資領域のポートフォリオを構築し、企業が変革していく3つのウエイブを意識しながら、事業ポートフォリオをシフトさせ続けることが重要です。

プロフェッショナル経営参謀の仕事とはどのようなものか?

「先が見通せない」「成功確率が読めない」、しかも「変革が長期にわたる」ということを前提に推進するとなると、このように長期的なトランスフォーメーションには、経営者のリーダーシップがなにより重要です。そして、リーダーの思考の幅を広げ、本質的に何の意思決定を行うべきか助言する「経営参謀」という存在も極めて重要になります。

プロフェッショナル経営参謀の仕事
・議論すべき課題と論点の見立て(適切な課題設定と論点の粒度を見極める)
・意思決定プロセスのデザイン(意思決定のメカニズムを読み、プロセスを組み立てる)
・議論の誘発(考えさせられる材料と質問の突き付けで刺激する)

 中でも「課題の設定能力」は非常に大切で、設定される課題には「その企業にとって固有である」「次に何らかのアクションにつながる」「先々を見通した環境変化に対応し得る」「俯瞰的かつピンポイントである」「今、解くべき課題が設定されている」「議論が生まれやすい」といった条件が求められます。そのため経営参謀には、下記のような視点・能力も求められます。

●プロフェッショナル経営参謀に求められる視点
・変化が激しく、先を見通せない時代のかじ取り役
・今の競争と明日の競争をつなぐ「時間軸」の概念
・分析やロジカルシンキングだけに頼らない想像力
・自分には見えない世界があることを認める素直さ
・多様な価値観や考えに対する理解力と柔軟性