二極化する広告の役割。コロナ禍で鮮明化した屋外広告の真価

効率化だけでは生み出せない、本当の価値とは何か?

JBpress/2021.8.23

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広告活用は「プロモーション」と「ブランディング」に分かれる

――従来型の屋外広告とプログラマティック広告、今後はどのような使い分けが進むのでしょうか。

山本氏 屋外広告の分野でもデジタルが先鋭化しつつあります。だからと言って、街中で「〇〇%OFF!!」といったセールス広告を出されても、よほど買いたいと思っている商品やサービスでない限りあまり気分の良いものではないと思います。こうした広告は、広告主の企業価値も、街自体の価値も損ねてしまうでしょう。

 もちろん、買いたいと思っているお客様に届けるようにターゲティングの精度や効率化を目指した仕掛けも必要ですが、屋外広告のもう一つの本質は別のところにあるんじゃないかと思います。そう考えると、今後は「プロモーション」と「ブランディング」といった2つの目的に分かれてくるはずです。

 近年、スマートフォンの位置情報を活用して人流解析を行い、その結果を踏まえて特定の時間帯に集中的にデジタルサイネージを出稿する仕組みも出てきています。また、「GAFA」のような海外プラットフォーマーが行動履歴等のデータを活用して、屋外広告の配信を最適化する仕組みも拡大していく可能性があります。これらは画期的な仕組みである一方、どれほどのプロモーション効果が見込めるかは都度、冷静に見極める必要があります。

 片や、屋外広告自体は「街をつくる風景の一部」という見方もできます。そして、屋外広告には街の価値、いわゆる「ロケーションバリュー」が存在することにも注目して、活用することが求められます。

 人々がなかなか外出できない期間を経て街に出た時、そこで様々な屋外広告を目にするはず。そのときに企業は人々にどんなメッセージを届けるのか。「プロモーション」だけの枠組みではなく、企業価値を向上させるための「ブランディング」として屋外広告を捉えることが大切になってくるのではないかと思います。

――最後に、今後の屋外広告の可能性についてコメントをお願いします。

山本氏 コロナ禍で街の風景が一変し、人々の価値観にも変化がみられました。屋外広告もデジタルとの連携が進み、広告主側が届けたい相手に効率的に広告を掲出する方法も増えつつあります。しかし、屋外広告が「街の風景の一部」ということは変わりません。

 いつかは始まるアフターコロナの時代において、「リアルの価値=街の価値」はさらに輝くものになっていくと思います。街の風景を彩り、人々に偶然の驚きや感動を伝える屋外広告の価値も、時代の変化に伴ってさらに高まっていくと信じています。