だが、CNBCによるとプライバシー擁護団体などは、一部の国が新たな法律をつくり、市民の政治的な主張に関する写真を検閲するために利用する恐れがあると指摘している。

 こうした懸念を払拭する狙いでアップルは8月8日にウェブサイトに文書を公開。「当社はそのような要求に一切応じない。この機能は、iCloudにアップロードされる児童ポルノを検知するためだけに開発した」と説明。

 この中で同社は、「これまでに、政府からプライバシー保護機能を緩めるように要求されたことがあったが、アップルは断固として拒否してきた」とも述べた。

 米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、19年12月に米海軍施設で起きた銃撃事件を受け、当時のウィリアム・バー米司法長官は、容疑者が所持していたiPhoneのロック解除をアップルに求めた。だが、同社は司法長官の要求に応じなかった。同社は15年12月にカリフォルニア州サンバーナーディノで起きた銃乱射事件の際もロック解除を拒否したという経緯がある。

 アップルによると、iPhoneのロックを解除するためには、暗号化されたデータへのアクセスを可能にする「バックドア(裏口)」という特別な仕組みを用意する必要がある。同社は「もし、バックドアを設ければ、何者かに悪用される。善人だけが利用できるバックドアというものは存在しないというのが我々の変わらぬ主張だ。結局は国家の安全が脅かされ、個人情報も危険にさらされることになる」と説明。iPhoneのロック解除に関して一貫して捜査当局の要請に応じない方針を示してきた。

「消費者の信頼を裏切る行為」

 だが英フィナンシャル・タイムズは、アップルが新たに導入する児童ポルノ検知機能は危険なほどにバックドアに近いと報じている。一部の国家が国民の締め付けに利用する恐れがあるという。

 CNBCの記事は、「機能の一部が、利用者の意思と関係なく、端末上で自動的に処理される点が問題だ」とする専門家の見解を伝えている。「利用者が購入した端末は、利用者が所有するものであり、利用者自身の意図で操作するべきもの。アップルの行為は消費者の信頼を裏切るものだ」といった批判も聞かれるという。

 (参考・関連記事)「ぶれぬアップル、iPhoneのロック解除要請を拒否 | JBpress