デジタルでイノベーションの創出も効率的になる

 生産性の向上とイノベーション創出が進んだ先の「未来の組織とワークスタイル」とはどのようなものか。岩本氏は次のように話す。

「今回のコロナ禍で明らかになったことの1つには、今まで効率的だと思っていたことの中にも非効率なことが結構、存在していたこと。ミーティングの仕方もそうです。ただ、その非効率性はテクノロジーを使うことで、圧倒的にそぎ落とすことができます。デジタルの活用で、生産性を向上させることができるのです。もう1つ明らかになったのは、テクノロジーを使うことで、今までできなかったようなワイガヤもできることです。効率的なイノベーションの創出も今後は可能になるでしょう」

 岩本氏が知る外資系企業の先進事例に、従業員が持っている知見やノウハウを、従業員自身が講師となって教える研修講座をグローバルにラインアップしたというものがある。自分の業務に関係あるなしにかかわらず、関心がある講座に従業員が参加して、コミュニケーションがとれるプログラムを人事部が用意しているという。

 オンラインであれば、他部署はもちろん、海外の従業員ともコミュニケーションがとれるし、研修講座はアーカイブでも保存されているので、時間を問わず受講することもできる。「グローバル企業ともなると、世界のどこに誰がいるかなんて、なかなか把握できませんが、このプログラムでは、それが見える化されるため、従業員同士のコミュニケーションが活性化し、イノベーションの創出につながっていったようです」(岩本氏)

 こうした一方で、コロナ禍はface to faceの価値を改めて浮き彫りにした。face to faceでディスカッションした方がいいこともあれば、リモートで済んでしまうようなミーティングも明確になってきた。今後はface to faceでやる限りは、必ず付加価値を出そうという意識も高まるはずだ。「face to faceのミーティングをうまくファシリテートしていくようなテクニックがますます重要になります」と岩本氏は言う。

 過去の人事制度、労働組合との関係性などから、なかなかできなかったワークスタイル変革だが、これが今、新型コロナを契機に進み始めている。

「生産性を圧倒的に高めるチャンスであり、マネジメント層がリーダーシップを発揮して取り組む企業は、実際に足元の業績が伸びています。逆に言うと、これに乗り遅れると、企業競争力の差は歴然とするでしょう。経営トップの判断次第で、どちらの極に進むのかが今、まさに問われています」と岩本氏は指摘する。