テック大手の対策と目標

 米テクノロジー大手はそれぞれに気候変動対策を積極的に進めている。米アップルは21年4月15日、森林再生プロジェクトに投資する2億ドル(約220億円)の基金「レストア・ファンド」を創設したと明らかにした。大気中から二酸化炭素(CO2)を削減するとともに、収益化も目指し、投資家への金銭的リターンも生み出すとしている。

 アップルはオフィスや直営店、データセンターをすべて再生可能エネルギーで稼働させており、自社の企業活動でCO2排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を達成している。今後は製造サプライチェーンや製品ライフサイクルの全般で30年までにカーボンニュートラルを目指す。

 グーグルは30年までに世界中のデータセンターとオフィスでのCO2排出を相殺ではなく純然たるゼロにする「カーボンゼロ」を達成する目標を掲げている。電力を常時クリーンエネルギーで賄う「24/7 カーボンフリー(24時間365日脱炭素)」を目指している。

 米マイクロソフトは20年1月、30年までにCO2排出を実質マイナスにする「カーボンネガティブ」を目指すと発表。50年までに1975年の創業以降の排出量に相当するCO2を削減するとしている。

 アマゾンは21年5月、同社初のサステナビリティー債を発行し、10億ドル(約1100億円)を調達したと明らかにした。再生可能エネルギーやクリーンな輸送手段、持続可能な建築物のほか、手ごろな価格の住宅などに投資する。このほか、他の社債も発行し総額約185億ドル(約2兆400億円)を調達。これら資金を輸送用電気自動車(EV)や電動自転車の購入などの既存・新規プロジェクトに投じる計画だ。

気候誓約やビジネス投資推進で大手連携

 アマゾンは19年9月に、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の前事務局長、クリスティアナ・フィゲレス氏が創設した英グローバル・オプティミズムとともに、気候変動対策に関する誓約「クライメート・プレッジ」を発表。国際的な枠組み「パリ協定」の目標年より10年早い40年までにカーボンニュートラルを達成すると約束している。

 20年12月9日、アマゾンはこの誓約にマイクロソフトや、英蘭食品・日用品大手ユニリーバ、欧州の飲料大手コカ・コーラ・ヨーロピアン・パートナーズ、フィンランドの代替航空燃料大手ネステなど13社が署名したと明らかにした。これには米IBMや米配車サービスのウーバーテクノロジーズ、米格安航空会社(LCC)のジェットブルー航空なども署名しており、21年4月21日には参加団体が計105団体になった。

 最近は大手がこうして連携・協力する動きが広がっている。21年6月にはアマゾンやグーグル、マイクロソフト、セールスフォース、ユニリーバ、米ウォルト・ディズニー、米ネットフリックスなどが、効果的な気候変動対策へのビジネス投資を推進する団体「Business Alliance to Scale Climate Solutions(BASCS)」を設立した。ESG投資が注目される中、今後こうした企業連合がいくつも発足するのだろう。