フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)は昨年、「SNSの運営企業は真偽の裁定者になるべきではない」との考えを表明。「政治的な発言は民主主義社会において最も慎重に扱うべきものの1つ。政治家のメッセージは皆が見られるようにすべき」とし、偽情報など規約に違反する内容でもニュース価値があると判断すれば掲載を続けていた。
ただ、そうした無干渉なアプローチがヘイトスピーチ(憎悪表現)や偽情報の拡散を助長しているとし、人権擁護団体などから非難された。20年7月には大規模な広告ボイコット運動が起き、一部の大手企業は20年末まで広告掲出を取りやめた。ボイコットは最終的に1100社以上が参加したと伝えられている。
フェイスブックのクレッグ副社長は今回、「政治家の投稿を一般ユーザーの投稿と同等に扱うことにした」と述べた。同社では、ニュース価値があり、公共の利益が危害のリスクを上回ると判断したものに限り閲覧可能にしている。この措置はすべてのユーザーが適用対象になるという。「条件は政治家も一般ユーザーも同じだ」と同氏は強調した。
野党・共和党がSNS大手を批判
フェイスブックが最初に方針転換したのは、前述したトランプ氏アカウントの凍結決定時だった。ザッカーバーグCEOはこの時の自身の投稿で、連邦議会議事堂に集まったトランプ氏の支持者らによる暴動に触れ「とがめるのではなく、むしろ容認するためにSNSを使ったトランプ氏の行動は米国や世界の人々を困惑させた」と非難した。
ザッカーバーグCEOは「トランプ氏はこれまで何度も規約違反を犯したが、『国民はさまざまな政治意見を聞く権利を持つ』との信念の下、同氏のSNS利用を認めてきた」と説明。「だが、状況は変わった。我々のプラットフォームは、民主的に選ばれた政府に対する暴動を煽るために利用された。引き続きサービスの利用を許すリスクは、あまりにも大きすぎる」と指摘した。
一方、こうした措置を巡り、野党・共和党は「テクノロジー大手が保守的な意見を抑制したり検閲したりしている」とし、SNS大手への反発を強めている。南部フロリダ州では21年5月、選挙候補者のSNSアカウントを凍結したり、削除したりすることを禁じる新法が成立した。同州ロン・デサンティス知事(共和党)は言論の自由を強調し「フロリダの市民はどの候補者の意見を聞くかを自分で考える。判断はテック大手がすべきではない」と批判した。