データ囲い込みの問題

 もちろん、このような「データ囲い込み」には警戒論や批判があります。まず、データの自由な流れを制限すれば、何らかの形でデータの活用や効率性を阻害し、デジタル化の果実を損なわせることになります。また、国際的に活動している企業にとって、データ・ローカライゼーション政策を採る国にいちいちサーバーを設置することは、コストを増やす要因となります。

 さらに、データを自国内に囲い込んだ国が、必ずしもこれらのデータを民主的かつ透明に取り扱うとは限らず、むしろ強権的な取り扱いに向かう可能性も考えられます。例えば、当局が海外企業に対し、国内のサーバーに保管されている個人データについては当局に提出せよと求めてくるかもしれません。

「データの自由な移動」

 TPP(環太平洋パートナーシップ協定)やRCEP(東アジア地域包括的経済連携)などの国際的な合意では、「データの自由な移動」(data free flow)を基本とし、その制限は特段の事情が無い限り認められるべきではないとの考え方を示しています。

 日本も、2019年のG20議長国として、“data free flow with trust”という考えを打ち出しています。このように、日本がデータ・ローカライゼーションの動きと一線を画していることは、デジタル化の基本思想からも、また国際世論との関係でも望ましい方向性であると思います。