オープンイノベーションが進む日本のMaaS

 ここから日本の各企業による代表的なMaaSの取り組みについて見ていこう。

●ソフトバンクとトヨタ自動車による「MONET」
 ソフトバンクとトヨタ自動車は2018年10月、新たなモビリティサービスの構築に向けて「MONET Technologies株式会社」を設立した。

 同社では自動運転社会を見据え、石川県加賀市と連携し、加賀市内で運行されている乗り合いタクシーに通信機器を設置し、データを収集。モビリティサービスや道路計画への活用を目指す等、MaaS領域におけるオープンイノベーションに向けてさまざまな取り組みを行なっている。

●小田急電鉄とヴァル研究所による「MaaS Japan」共同開発
 鉄道会社である小田急電鉄は2018年4月中期経営計画(2018~2020年)において「次世代モビリティを活用したネットワークの 構築」を2020年までの目標に掲げた。具体的には自動運転バスの実証実験や、ヴァル研究所と交通手段の電子チケットを提供するためのデータ基盤「MaaS Japan」の共同開発に合意したことを発表。小田急電鉄が展開する多様なサービスだけでなく、他社とのシームレスな連携により、関連サービスも一つのサービスとして利用者に提供するMaaSの取り組みを推進している。

小田急電鉄とヴァル研究所によるオープンな共通データ基盤「MaaS Japan(仮称)」のシステム構成図(画像は小田急電鉄とヴァル研究所のプレスリリースより)

●JR東日本の「MaaS事業推進本部」
 同じく鉄道会社のJR東日本ではシームレスな移動の実現を目指し、オープンイノベーションでMaaS事業を強力かつスピーディに推進していくため、2019年4月に「MaaS事業推進本部」を設立した。

 同社ではこれまでも2017年に交通事業社、メーカー、教育・研究機関等が連携し、社会課題の解決に向けて取り組むことを目的に「モビリティ変革コンソーシアム」を設立する等MaaS実現に向けた実証実験等行ってきているが、これまで以上にMaaSに力を入れていくことを公表した形だ。

 なお、2019年1月には小田急電鉄とMaaS分野での連携を検討すると発表。移動時間の短縮や、目的地までのストレスフリーな移動の実現、さらにはスマートフォンアプリで輸送障害発生時の迂回乗車経路を利用者に提案する等、鉄道会社の垣根を超えた動きに注目が集まっている。

JR東日本が目指す「モビリティ・リンケージ・プラットフォーム」(画像はJR東日本プレスリリースより)