日本のMaaS事業から期待される未来

都市機能をアップデートするMaaSとは

逆瀬川 勇造/2019.8.2

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 昨今、モビリティ革命として自動車メーカーや鉄道会社等を中心に盛り上がっているMaaS(Mobility as a Service)。これまで自動車メーカーや鉄道会社等の輸送業界は会社ごとに物やサービスを提供してきたが、それらすべてを一つのサービスとして捉え、シームレスな移動(MaaS)を提供し、利用者の移動の最適化を図る動きがある。

 MaaSは、国土交通省等官民が連携することで、利用者個人の最適化にとどまらず、将来的には地域や都市全体の最適化を目指している。今回はそもそもMaaSとはなにか、また国内外の輸送業界におけるMaaSの取り組み、官民が連携し目指すMaaSの姿や輸送業界以外との連携による今後の展望について考えてみよう。

官民が連携し、シームレスな移動手段の提供を目指すMaas

最適化された移動手段を提供するMaaS

 MaaSについて考える前に、サブスクリプション型のビジネスモデルとして注目されているNetflixやSpotifyについて考えてみよう。両社に注目すべき理由は、これまでテレビ局や映画配給会社、レコード会社が会社ごとに提供していたコンテンツを一のプラットフォームにまとめ、ビジネスモデルとして確立した点である。コンテンツが集約されたことで、利用者は見たいもの、聞きたいものを探す際に、提供元ごとにコンテンツを探す手間を省くことができるようになった。さらに利用者の視聴履歴に基づくリコメンド機能等により、知らなかったコンテンツにも容易に出会えるようになった。

 このように一のプラットフォームに物やサービスを統合し、利用者一人ひとりに合ったサービスを迅速に、かつ丁寧に、そしてリーズナブルに提供することで、利用者はより一層コンテンツそのものを楽しめるようになったと言えるだろう。

 そして現在、輸送業界にも同様のパラダイムシフトの波が来ている。
これまで会社ごとに独自のサービスを提供してきた自動車や鉄道、タクシー、バス、カーシェアリング等の輸送業界が、会社や業界の垣根を越えてすべての物やサービスを一つのサービスとして統合し、最適化された移動手段を提供する。MaaSとは、こうした「新しいシームレスな移動」の概念のことを指す。MaaSが実現すれば、利用者は一つのスマートフォンアプリで出発地から目的地まで、スムーズに移動手段の組み合わせを選択、予約、決済まで一括してできるようになるとされる。

 例えば自国生産の自動車メーカーがないフィンランドは、マイカー依存からの脱却を目指して官民連携でMaaSに取り組んでいる。例えば「Whim」というアプリは、出発地点と到達地点を入力すると、電車やバス、タクシー、カーシェア等運営母体を問わずさまざまな移動手段を提案してくれる。さらに移動手段の予約や料金の支払い方法は都度払いの他、サブスクリプションもあり、全てスマートフォン上で完結できる。
Whim自体は交通サービスも保有していないが、既存の交通サービスを連携することで移動の最適化を実現しているのだ。

 しかし、このように官民連携でMaaSを進めたとしても、最初から輸送業者各社のサービスを全て統合することは難しい。スウェーデンのチャルマース大学の研究チームによると、MaaSは、その統合の程度に応じて5つの段階に分けられるという。

MaaSの4段階(画像は「国土交通政策研究所報 第69号〜2018年夏季〜」4頁より)

 レベル0は「事業者が個別に交通サービスを提供する状態」、レベル1は「複数の交通手段の情報が統合された状態」、レベル2は「複数の交通手段を一本化し、予約・決済可能な状態」、レベル3は「一つのサービスとして結合され、定額制が加わった状態」、レベル4は「パッケージ化されたサービスが地域政策と結合している状態」だ。

 現在、日本のMaaSは自動車メーカーや鉄道各社等が情報の統合を図るためプラットフォーマになろうと名乗りをあげている段階で、レベル1の状態にある。