領域を超えて人・技術・頭脳を「集積」せよ

平井内閣府特命担当大臣が語る日本のデジタルの未来

松ヶ枝優佳/2019.7.11

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「課題」に狙いを定めて
破壊的イノベーションを興す

 さらに、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発を、関係省庁が一体となって推進する「ムーンショット型研究開発制度」で、破壊的イノベーションを生み出そうとする取り組みも進めているという。

 ムーンショットとは、1961年にジョン・F・ケネディ大統領が月面着陸を宣言し、1969年にそれを実現したことに由来する言葉で、「目指す未来から逆算して立てられた大胆な目標」といった意味合いを持つ。破壊的イノベーションは狙って興せるものではない。しかし、デジタル化やグローバル化の加速で、「成功確率を高める環境やプロセス」が、ある程度視野に入ってきた。破壊的イノベーションが興る確率が高まる中で、各国は相当な予算を投じてムーンショット型の研究開発を行おうとしている。

 民間においてもその動きは活発だ。例えば、Googleの次世代技術開発を担う「X」や、スペインの大手通信事業者であるテレフォニカが立ち上げた「アルファ」は、まさにムーンショット型の研究開発を行う組織だ。日本では、ソフトバンクが無人航空機開発のAeroVironmentと設立した合弁会社「HAPSモバイル」を通じて展開するHAPS事業などがそれに当たるだろう。

 成層圏に通信プラットフォームを構築するという革新的な取り組みで注目を集めるHAPSモバイルは、Googleの親会社であるAlphabetの子会社「Loon」との提携も発表しており、成功すれば日米共同のムーンショット型開発の好事例となりそうだ。

 政府としてもこうした動きを促進し、官民の連携を強化していく必要がある。環境の変化を踏まえて、平井大臣は今後の大企業のあり方について次のように呼び掛ける。

「大企業には、挑戦するマインドをもう一度たぎらせてほしいと考えています。われわれも税制などで後押ししていきますので、研究開発の予算をもっと確保し、内にこもるのではなく、大学や研究機関と共に新しいものを生み出してほしいのです。また、協調領域と競争領域を明確に切り分けることも大切です。一つの方向性を定め、かたくなにそこで競争していく旧来の考え方では、いくら体力のある大企業といえども行き詰まると思います。future pullの姿勢でイノベーションを推進していただけることを期待しています」

 少子高齢化などの社会課題を抱えて「課題先進国」と呼ばれる日本は、世界の注目を集めている。先進各国は今、近い将来自国でも起こり得ることやその対策について、日本を先行事例として見定めようとしている。

「どの分野にしても、諸外国に『日本と一緒にやっていきませんか』と持ち掛けると、『ぜひ一緒にやりたい』と歓迎してくれます。これは先人が築き上げてきたものに対する共感や信頼に他なりません。これは日本の大きな財産です。人生100年時代を迎える日本を、世界は静観しようと考えているのではなく、協力体制を取っていきたいと考えています。多くの人が社会参画でき、生きがいを感じられる。そして、デジタルのメリットをうまく取り込んで、いつまでも文化や芸術に関心を持っていられる社会をつくることができれば、日本は間違いなく最先端の国になれます」

 日本が抱える「課題」は大きなチャンス、と平井大臣は捉えている。社会課題を起点にムーンショットを掲げ、イノベーション創出による解決を試みる。産学官民が組織やエリアの壁を超越して取り組みに参加できるようなエコシステムが整備できれば、日本は「イノベーション大国」に成り得る、と熱く語る。