課題解決に向けた動き

 中小企業庁は2017年7月7日に「事業承継5ヶ年計画」の策定を発表。以降5年程度を事業承継支援の集中実施期間と定め、様々な支援施策を行なっていく予定だ。

 昨年度は事業承継税制(贈与税・相続税の納税猶予及び免除制度)が大きく改正され、税制適用条件の緩和・拡大、税制適用後の納税の負担軽減を図る10年間限定の特例措置が設けられた。

 事業承継税制は、後継者が非上場会社の株式等(法人の場合)や事業用資産(個人事業者の場合)を先代経営者等から贈与・相続によって取得した際、経営承継円滑化法による都道府県知事の認定を受けると、贈与税・相続税の納税が猶予または免除される制度。これを2027年12月31日まで大幅に拡充することで、中小企業の事業承継を加速させる狙いがある。

 また昨年10月29日、中小企業庁は事業承継の更なる促進について、支援機関(商工会・商工会議所、士業、金融機関等)による取組の活性化や、事業者の意識醸成・連携強化を図るために「全国事業承継推進会議」を開催し、述べ3000名の参加者を集めた。これを受けて、2019年に入ってからは、より現場に近いレベルでの事業者の意識醸成や、支援機関の地方支部間の連携をさらに強化し、円滑な事業承継を推進していくことを目的とした地方ブロック会議が開催されている。

 そして、民間でも以下のような支援団体やマッチングプラットフォームが注目を浴びている。

●一般社団法人ベンチャー型事業承継

 家業の有形無形の経営資源を活用して、新規事業の開発(新サービス・製品の開発、業態転換、新市場参入など)を行なう「ベンチャー型事業承継」を試みる、34歳未満の若手後継者を支援。全国の自治体や企業・団体と共に、アイデアソンやピッチイベント等のイベント事業や事業化支援、資金調達・業務提携支援や事業化促進サポートを行っている。

 同団体の理事にはクラウドファンディングで知られる「マクアケ」の代表取締役社長・中山亮太郎氏が名を連ねるほか、クラウド会計ソフトで知られるfreeeの代表取締役CEO・佐々木大輔氏も顧問として参画している。また、2018年10月15日には野村資産承継研究所から、2018年12月14日には三井住友銀行からの協賛決定を発表しており、2018年6月20日の発足以来、多くの注目を集めている団体だ。

●TRANBI

 日本最大級の事業承継・M&Aプラットフォーム。売り手は無料という仕組みを採用することで、企業規模による制約を無くし、事業承継に悩む個人事業主や中小企業だけでなく、多角化を進める上場企業にも利用されている。

 事業承継の形として、M&Aによる第三者への譲渡も考えられるが、国内にはM&A専門家が少ないことや、高額な手数料がハードルとなることも多い。そうした状況を打破する手段として、オンライン上で売り手と買い手をマッチングさせることで、M&Aにかかるコストや手間、時間を短縮できるTRANBIのようなプラットフォームが登場してきている。

 同サービスは地域金融機関との提携も拡大しており、2019年1月には登録ユーザー数2万人を突破(2018年7月の1万人突破から約半年での達成)。同月末時点で累計M&A案件数は2202件、累計マッチング数は9336件、平均買い手候補社数は11社となっており、今後も成長が期待される。

●M&Aクラウド

 TRANBIと同じく、M&Aにおける買い手企業と売り手企業とを繋げるマッチングプラットフォーム。同サービスは社名や買収条件、買収実績を公開している買い手に対し、売り手が直接売却を打診できるという特徴を持つ。

 2018年11月1日より「スカウト機能」を実装し、売り手側は匿名の会社情報を登録することで、実名の買い手企業から直接スカウトを受けられるようになった。スカウトを送れるのはM&Aクラウドで実名や買収ニーズ、会社の運営方針等を掲載している企業に限られるため、安心して取引を進められる仕組みだ。

 2019年1月8日にはシニアアドバイザーとして国際投信投資顧問(現・三菱UFJ国際投信) 元会長の吉松文雄氏を迎え、さらなる事業成長や金融機関との連携、営業・管理体制の強化を図っている。

 このように、現在「事業承継」という社会課題には多くの関心が集まっているのだ。