事業承継に眠るビジネスチャンス
後継者不足の解決策として注目される「ベンチャー型事業承継」や「M&A」。特に前者は、M&Aや第三者承継をしたくとも、買い手を見つけるのが困難な小規模な企業にとって有効な手段だ。起業家精神を持つ若手後継者にとっても、ゼロから自分でビジネスを立ち上げるのではなく、継承先の家業を自身がやりたいことに寄せていくスタイルは合理的だろう。
前掲の帝国データバンクによる調査結果を見ると、全国・全業種の後継候補の選定が済んでいる約9万3000社の内訳で、後継者候補の属性として最も多いのは「子供」で39.7%。次いで「非同族」の33.0%となっており、年代別に見ると60代以降の社長は後継候補に「子供」を選定するケースが多いことが明らかになっている。
一方で、社長が50代以下の企業は「親族」や「非同族」を後継候補とする場合が多く、50代では約4割が「非同族」を後継候補としている。この結果、全国平均では「非同族」の割合は2017年と比較して1.5ポイント上昇している。帝国データバンクはこの変化について、上で挙げた「事業承継税制」における対象制限の緩和や、国や自治体の政策的な支援のほか、以前よりも社内外の第三者へ事業譲渡を行うことに対する抵抗感が軟化しつつあることも影響しているという見解を示している。
こうした変化を受け、今後も中小企業のM&Aを仲介するマッチングサービスの利用者は増加していくことが予測される。売上高が年一千万円以下の小規模業者まで扱うTRANBIでは、脱サラした若者が掲載企業を買収したケースもあると報じられており、スタートアップにとっても、経営資源を備えた中小企業はチャンスが眠る領域として、ますます注目を集めていくのではないだろうか。
中小企業庁がとりまとめている2018年版「中小企業白書」によれば、全企業数の99.7%を占め、雇用全体の7割を創出(2014年時点)している中小企業は、まさしく日本経済の屋台骨。「事業承継」問題は社会課題であると同時に、イノベーションを生む土台として、今後も注目すべきテーマだ。