今後の展開
2018年6月1日に野村総合研究所が発表したレポート「EdTech市場の現状と課題」によれば、2016年度におけるEdTech市場規模は約1700億円と推計され、市場拡大の余地はまだまだ大きいと見込まれる。特に今後は、公教育における情報端末の整備が進む2020年前後にかけては、児童・生徒向けの教科学習コンテンツが市場を先導し、2023年にはEdTech市場全体で約3000億円に達する見込みだという。
また、今回具体的なサービス名は取り上げていないが、EdTechは社内教育や研修の場での活用も進んでいる。労働人口が減少する一方で顧客ニーズの複雑化が進む昨今、企業における人材教育の重要性はますます高まっているためだ。野村総合研究所のレポートでは客室乗務員の訓練・教育にスタディストのマニュアル作成・共有プラットフォーム「Teacheme Biz」を活用する日本航空の事例が挙げられている。タブレット端末を社員一人ひとりに貸与し、同プラットフォームを活用することで、社員教育の品質が向上しただけでなく、マニュアルや教材作成に要する時間の短縮に成功し、間接部門の業務効率化にもつながった。
今後はAIが指導役や教員の役割の一部を担うともいわれているが、それは人間の教員が不要になるということではない。ベネッセホールディングスが2018年7月5日に発表した「Classi」導入校の学習記録データの分析結果では、同サービスのメッセージ機能を利用する等、教員側から生徒への働きかけが行われている学校ほど、成績が向上する傾向にあるという結果が明らかにされた。生徒の学習意欲が低下してしまった際、その生徒が再び意欲を取り戻し、主体的に自らの能力を伸ばしていけるよう、直接手を差し伸べることができるのは生身の教員だ。
決められた単位や時間数、指導要綱に従って各科目を詰め込んでいく既存の「教育」の在り方は終わりを迎えようとしている。今後は教科の枠に囚われず、自らの力で社会課題を発見し、解決していける人材を育成していくために、様々な場面でテクノロジーが導入されていくだろう。
加えて、今以上に少子高齢化が進んでいけば、生涯教育領域も今まで以上に注目を集めるようになっていくはずだ。日本が「課題“解決”先進国」になれるかどうかは、EdTechを活用できるか否かにかかっているのかもしれない。