一過性のブームではなく、時代が求める必然の変化

「もともとILSを始めたきっかけは『なぜ日本ではオープンイノベーションが起こりづらいのか?』と考えたときに、アカデミアとベンチャー、そして大手企業という3つの村の間での人材流動が極めて少ないからだ、という課題感を持ったからなんです。大手企業や大学からベンチャーへの人材流動を促進するのは難しいと思いますが、チームを作ることはできると思ったんです」と話す松谷氏。

 年々来場者数が増加しているILS。海外の政府機関からも注目されており、今回のパワーマッチングにも韓国やドイツ、イスラエルや台湾などのベンチャー企業75社が参加している。こうした企業は、ILSの開催地である「日本」の市場進出というより「その先」を見据えているのだという。

「台湾や韓国、イスラエル等は自国のマーケットが小さいので、事業を拡大しようと思ったら必然的に海外に出て行かなければなりません。そんな中、グローバルブランドと協業し製品供給ができれば自ずと世界進出できると考えています。自社に興味を持つ大企業や自らが興味のある大企業と一度にまとめて商談できるILSは、彼らにとって良い機会なのでしょう」

 また、アジアを中心とした中の技術力を東京に集め、世界中で展開できるようなエコシステムを構築したいと話す松谷氏。

「日本の大手企業は、持っている技術の競争力は高いのですが、画期的なビジネスモデルや製品を作ったり、全体を司るアイデアや構想力が弱いのが課題といわれます。逆にiPhoneなんかは、使われている技術一つ一つはさほど先進的な物というわけではありませんでしたが、ビジネスモデルが画期的でしたよね。なので世界中、特にアジアの面白い技術やアイデアを持った会社に、ILSを通じて『日本の大企業とビジネスをしたい』と思ってもらいたいんです」

 最後に、日本のオープンイノベーションに寄せる期待や、オープンイノベーションを成功させる秘訣について語ってもらった。

「ドラッカーは『危機感でしか人は動かせない』といいましたが、日本でも危機感が高まっている以上、今後もオープンイノベーションが活発に行われていくのではないでしょうか。ブームではなく、時代の変化ということですね。ILSの(大手企業側の)参加者層は第一回開催当初中心となっていた事業開発部の担当者から研究開発部を含めて幅広くなっていますが、本来予算や人事権を持っているところが(オープンイノベーションを)やる方が成功させやすいんですよね。一方で、社内で研究開発していた分野を掘り下げていく以上、大手企業の現場は『社外に良い技術があった』という、時に自己否定にも繋がりかねない事実を認めた上で、しっかりとリーダーシップを取っていけるようになる必要があると思います」

「より良い物が外にある」ということを研究開発の現場が認めたがらない大企業は多いのだと話す松谷氏。一方、「誰も見たことがないもの」や「目新しいもの」はそう生まれない。共通の目標を掲げ、大手企業とベンチャー企業が協力し、POCを繰り返しながらアイデアや技術を磨き製品化していく。そんな建設的なオープンイノベーションを促進させる鍵となるのがILSで利用されているようなデータベースであり、松谷氏が目指すエコシステムの構築にかかっているのではないだろうか。

● Innovation Leaders Summit(ILS)
「オープンイノベーショントレンドレポート」https://www.dreamgate.gr.jp/InnovationLeadersSummit/contact/