先日、世界でM&Aが活況を迎えており、1件あたり1兆円規模になるなど大型化しているという記事が出ていたが、日本ではどうか。
3月12日、大手企業のオープンイノベーション支援等行う株式会社アドライトは、三菱地所株式会社共催のもと「Mirai Salon #7- 大手企業のスタートアップM&Aによるオープンイノベーション戦略」をEGG JAPAN(東京・丸の内)にて開催。4名のゲストがオープンイノベーションにおけるM&Aの必要性や協業におけるポイント等語った。
新規事業の成長曲線はJカーブだからこそ継続的支援が必要
経済産業省 新規産業室で新規事業やスタートアップの支援に携わる石井芳明氏は、マクロの視点として、日本における起業やオープンイノベーションの状況、新規事業を浸透させるために必要なことについて触れた。
厚生労働省「雇用保険事業年報」によると、日本の開業率は2015年、23年ぶりに5%超えを果たし、起業する人の割合も欧州を抑え、米国に次ぐ19.0%を記録。大手企業のCVCが活発化し、ベンチャーの調達金額も低迷期の4倍増(2010年689億円→2017年2717億円)に。新興市場へのIPO数も低迷期の5倍増、上場ベンチャー企業の時価総額も拡大と、起業しやすい環境になっているという。
一方で、スタートアップとの連携について大企業の大半は成功事例が全体の25%に満たないとの調査結果もある。「起業実現や開業率などを高い水準で維持するためには、大手企業とスタートアップが共存するエコシステム形成がカギ」と石井氏。
前述のとおり起業率は上向く一方で、国民の7割はM&A含めスタートアップへの興味を持っていないことが調査結果で明らかに。この数字は大企業にも当てはまるという。
こうした意識を改革すべく、経済産業省はグローバル人材を育成する「始動Next Innovator」や創業者向け低金利の融資、企業側にはベンチャー投資促進税制による優遇措置や、経営者会議「イノベーション100委員会」にて経営陣の行動指針を取りまとめるなどし、ベンチャー政策を行っている。
そして社会として理解すべきこととして3つ挙げた。
1.画期的なイノベーションは新プレーヤーから出てくる
(Aは既存の大手企業、Bは新プレーヤー。AからBを見ると常に下に見える。Bは生産管理もマネジメントも不十分と見られ、法務や財務、経営会議で引っかかりやすい。しかし、それを承知で新しいプレーヤーを引き上げる、連携する姿勢が重要。
2.イノベーションは成功確率は低いがインパクトは大きい
ベンチャーキャピタルが投資する先(スタートアップ、ベンチャー)は1割がホームラン、2割はヒットの世界。ホームランの大きさによって勝負が決まる。既存事業とゲームが違うことを理解すべき。
3.成功には時間がかかる
新規事業はJカーブで成長していくため、どうしても悪い結果から先に見える。本当に成果が出るには5~10年かかる。マイルストーンを管理しながら継続することが大事。
「イノベーション・エコシステムの形成のため、社会として新しいプレーヤーを応援し、チャレンジを奨励すべき。皆さんも新たなチャレンジを」と投げかけた。