「スマートディスプレイ」なるガジェットをご存知だろうか。
今年1月にラスベガスで開催された世界最大の家電見本市「CES 2018」でも、各社から一斉にスマートディスプレイが発表されて話題を呼んだ。
簡単に言えばスマートディスプレイとは、スマートスピーカーに画面が付いたガジェットだ。つい「タブレットと何が違うの?」と思ってしまいそうだが、スマートスピーカーと同様に音声アシスタントが搭載されていて、タッチ操作ではなく声だけで主な操作を行なえるのが特徴となっている。あくまでも、メインは音声操作なのだ。
タブレットやスマートフォンに比べ、できることが限られているため、デジタルデバイスに慣れていない高齢者にも簡単に扱うことができる。また、基本的に据え置いて使うように作られている点も特徴だ。
日本でも昨年後半より各社からスマートスピーカーが発売され、「ユーキャン新語・流行語大賞2017」にも「AIスピーカー」がノミネートされたことは記憶に新しい。
国内でも音声認識ブームが巻き起こっているのは確かだが、はたしてスマートディスプレイは普及するのだろうか。
一足先に、スマートスピーカーの「次」をのぞいてみよう。
2014年11月6日にスマートスピーカーの「先駆け」、初代Amazon Echoの販売を開始したAmazon。
日本では未発売だが、海外ではスマートディスプレイも既に発売している。現在のところ、「Amazon Echo」シリーズでスマートディスプレイと呼べるのは、昨年6月に米国で発売された「Echo Show」と、年末に発売された「Echo Spot」の2機種。
Echo Showは、タッチ操作可能な7インチディスプレイを備える。基本的にできることは従来のAmazon Echoシリーズと大きく変わらないが、このディスプレイで動画を視聴したり、内蔵カメラを使ってビデオ通話をしたりすることが可能だ。
画面を搭載したことで、スマートスピーカーによる音声解説だけでは実用的ではなかったシーンも幅広くカバーできるだろう。例えば料理の手順を知りたいときなど、音声でつらつらと説明されるだけではいまいち不安を感じるようなシーンで、特に便利さを実感できそうだ。
一方、Echo Spotは本体も画面も一回り小さく、丸い目覚まし時計のようなデザインになっている。ディスプレイのサイズは2.5インチなので、Echo Showのように大画面を活かして動画を見たり細かな調べ物をしたりするのには向かない。
しかしこの小さな液晶が、「スマートスピーカーは痒いところに手が届かない」と感じているユーザーのニーズを満たす可能性も大きい。
例えばAmazon Echoシリーズには、話しかけるだけで買い物をすることができる機能がある(音声ショッピング)が、このとき、自分が注文しようとしている商品を目で見て確認したいユーザーは多いはず。たとえそれが、いつも購入している洗剤の詰め替え用パックだったとしても、確認用にパッと写真を表示してくれるだけで、音声ショッピングへの安心感がぐっと増すことだろう。
価格もEcho Showの229.99ドルに対し、Echo Spotは129.99ドル。スマートスピーカー黎明期の日本では、Echo Spotの方が幅広い層に受け入れられるのではないだろうか。
ちなみに、どちらも据え置き使用が想定されており、使用の際は外部電源が必要だ。
冒頭でも触れたが、CES 2018でGoogleアシスタント搭載のスマートディスプレイが多数発表された。
スマートスピーカー同様、Amazonに後れを取る現状を覆そうと猛攻をかけていることが分かる。
Your Google Assistant: coming soon to smart displays
Google純正の製品は発表されていないが、Lenovo、JBL、LG、Sonyの4社から2018年内に発売予定だ。
搭載される音声アシスタントは違えど、こちらもAmazon製スマートディスプレイと同じく、できることは「スマートスピーカー+α」だ。
とはいえ、現状Echoシリーズとの大きな違いとして、「YouTubeの閲覧」が公式にサポートされている点が挙げられる。反対に、Amazonプライムビデオの閲覧はできないだろう。
ご存知の読者も多いだろうが、AmazonとGoogleの確執は根深い。現在ChromecastをはじめとするGoogleのデバイスからはAmazonプライムビデオを快適に閲覧することができないし、Amazon製品であるEcho ShowやFireTVからはYouTubeの閲覧がサポートされていないのだ。
普段AmazonプライムビデオやYouTubeをよく見る人にとってはなんとも悩ましい問題である。紹介したスマートディスプレイが日本で手に取れるようになる頃には、両社の関係が改善していることを祈るばかりである。
日々スマートスピーカーを利用していると、段々と「検索」機能は使わなくなっていく。結局、一覧性のあるスマートフォンやタブレット、PCの「画面」で閲覧した方が圧倒的に効率が良いことも多いからだ。
その点、一見「どっちつかず」だが、スマホやタブレットとスマートスピーカーの「いいとこ取り」とも言えるスマートディスプレイには確かに需要があるように思える。
スマートディスプレイは、今年の流行語になれるだろうか? 今後も目が離せない分野になりそうだ。