既存大企業に起きた変化

 そして、現在である。

 多くのスタートアップが生まれ(また多くが消え去り)、既存企業を脅かしている。既存の大企業は、自社の既存製品や顧客を維持しながら、その中からイノベーションを生み出す必要が出てきた。

 しかし、既存大企業は巨大組織と官僚的構造によって動きがままならない。しばしば「サイロ」と揶揄的に呼ばれる部署と部署間の壁があり、ビジネスと開発が容易にはコラボレーションを進められない。ともすると、企画部署が企画を立てたら、あとは開発部署に丸投げとなる。もしくは、日本ではさらにその先のITベンダーに丸投げされる。

 当たるかどうか分からない新製品開発を、このように企画と開発が分離した形で行うのはそもそも無理だということに、多くの経営者が気づいている。

企画と開発が分離している状況(上部分)から市場・企画・開発の一体化へ

 この分離に加え、失敗を許さない既存事業の事業管理(年間計画と予算、さらに月次や四半期の計画差違に注目した進捗管理)と同じように新規事業を管理したら、確実にその事業を潰してしまうことも明らかだ。新規事業や新製品開発には失敗がつきものであり、いかに小さく失敗し、それを学びに変えて市場に認知されるかが肝なのだ。

 しかも、マーク・アンドリーセンが「Why Software Is Eating The World」と書いたように、サービスがソフトウエア中心になってきたことが、このムーブメントを加速している。ソフトウエアは、顧客が入手した後も機能をどんどん進化させて、アップデートしたバージョンを使ってもらうことができるという特性を持つ。従来の新製品開発の組織、手法では、多くの場合そのスピードについていけない。

 米ゼネラル・エレクトリック(GE)の元CEO、ジェフ・イメルトは在籍中に、リーン・スタートアップの著者エリック・リースをコンサルタントとして招き入れ、GE流の「FastWorks(素早く働く)」という活動を始動させた。ソフトウエアに強い若手を起用し、社内に、自律的なシリコンバレー流の小さなチームを作り、権限を与え、そこで新たな顧客価値の創造にトライさせた。

 あの製造業の巨人であるGEが「インダストリアルインターネット」(IoTのGE戦略)を標榜、ハードウエアからソフトウエア中心にシフトし、アジャイルを取り入れたのだ。

 スローガンを「GE Growth Value」から「GE Belief」に切り替えたのもGEの大きな変化だった(下の図)。規模成長の追求から信念へという価値の転換は、「起業家精神の尊重」「選択と集中」「強みのインソース化」も表現していると筆者は読む。そして、その強みの基盤としてソフトウエアの重要性を強調している。

「GE Growth Value」から「GE Belief」へ
(出所:『Harvard Business Review(2017年12月号)』 "How I remade GE and what I learned along the way" を元に筆者が作成)
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