この宣言は今でも色褪せないが、読んでみて分かるようにウォーターフォール型開発へのアンチテーゼとしての色彩を帯びている。

 左に書かれていることを重要としながらも、右側がより価値をもつ、という宣言になっており、よく見ると左側に書かれていることは、ウォーターフォール型のプロジェクトマネジメントではまさに最重要項目とされてきたことだ。

 もう1つのポイントは、これ自体が「アジャイルソフトウエア開発宣言」という名称をもつことからも分かるように、「ソフトウエア」を「つくる」側に力点が置かれており、ソフトウエア開発者側からのメッセージだったことだ。1990年代後半から2000年前半のアジャイルは、このように開発者の視点に立って、ビジネスにいかに貢献するかを目標に掲げていた。

 アジャイル開発手法の1つであるスクラムを開発したジェフ・サザーランドは、その動機を次のように述べている。

私は全く新しいオブジェト指向型4GLの開発リーダーをつとめていた。開発チームはいつでもプレッシャーをかけられ、管理者たちはいつも機嫌が悪く、そして顧客はいつも不満足。(中略)なぜこうなるのか、どうやったらこの仕事に携わる人たちの生活をよくできるか、というようなことをいつも話していた。そして行き着いたのは、「問題は仕事をするための組織構造にある」という結論だった。通常マネジメントは階層的であり、コマンド・コントロール型のプレッシャーによって管理しようとするものだ。コンウェイの法則によれば「ソフトウエアの構造はそれを作り出した組織構造に従う」という。私たちのソフトウエアはオブジェクト指向だったので、官僚的な組織構造とミスマッチが起きていたのだ。それならば、オブジェクト指向的な組織構造を作ったらどうだろう、と考えたというわけだ。
(ジェフ・サザーランドへのインタビューより。出所:『アジャイル開発とスクラム』平鍋健児・野中郁次郎著)

 つまり、核心にある動機は、

 いつも不満を抱えている顧客
 いつも不機嫌なマネジャ
 疲れ果てた開発者

という状況認識であり、その原因を、

 官僚的な組織構造
 コマンド・コントロール型のマネジメント

にあると捉えている。