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テクノロジー
2016.12.27

大辻雄介の「教育のIoT思議」 第6回:汎用端末か専用端末か
次世代に必要とされる学習端末の在り方

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学習に向いたデバイスは汎用端末 or 専用端末?

汎用端末と専用端末、いずれが学習端末として相応しいのでしょうか。一言でいうと「学齢による」と考えています。ITリテラシーが未習熟な低学齢層には専用端末が安心できます。

また学習に対する自己管理が難しいのも低学齢の特徴と言えるので(勿論、個人によりますが)、インターネットにアクセスできないことも重要になってくるでしょう。しかし専用端末はビジネスモデルとして難しい問題を抱えています。

開発コストが高くつくことと、在庫管理が発生することです。まだまだタブレットでの学習に抵抗感がある保護者が存在することを考えると、初期ロットをどれだけの量にするか、など経営陣は難しい舵取りを迫られます。

一方、汎用端末の場合はアプリの開発費用のみで済みますから、初期コストを抑えることが可能になります。しかしこちらも問題があります。タブレットPCを持っている家庭しか市場にならない、ということです。

 
出典:総務省「通信利用動向調査」

総務省の発表によれば平成27年時点で一般家庭でのタブレットPCの普及率は33.3%と多くはありません。まだまだ増加傾向にあるので、タブレットPC学習サービスは今後、初期費用の安いアプリ開発やサービス向上を目指しながら、汎用端末の普及を待つのが得策と考えられます。

「PCを持っているご家庭は遠隔授業サービスの利用を検討するが、遠隔授業のためにPCを購入することはない」
これは私がサラリーマン時代に新規事業開発で得た知見です。よく考えれば当たり前のことですし、読者の皆様も同様だと思われます。これはタブレットPCにも言えることで、顧客はやはり「サービスのためにタブレットPCを購入(あるいはレンタル)することはない」のです。

しかしサービス開発主は思い入れのあるサービスを世の中に広めたく思い、ついタブレットPCのセット販売などを検討してしまいます。サービス開発主はデバイスの普及率までコントロールすることは出来ませんから、慎重な対応をする必要があります。ビジネスという点を考えると学習用アプリは汎用端末が良いでしょう。

顧客や学習者にとっていずれが良いのか、を考えた場合もやはり汎用端末に一日の長があるように思います。先に述べた通り学齢が低いと専用端末のほうが安心できますが、ペアレントコントロールの活用やITリテラシーの向上で徐々にその心配も解消に向かうでしょう。

私が尊敬する教育学者、苫野先生(熊本大学准教授)は著書『勉強するのは何のため?』において「勉強とは自由になるためにある」と書いています。自由のない専用端末はその理念に反しています。タブレットPCは「社会とつながる窓」ですから、汎用端末を使って自由に学ぶことが次世代の学習者にとって大切です。

IoT化が進む時代において我々教育者に新たに課せられた責務は、子どもたちが汎用端末で遊びに耽ることなく、「自由」を学びに活かす姿勢とリテラシーを育むことと肝に銘じています。

上述の映画においてiMacの発表プレゼンテーションのリハーサルシーンが登場します。そのリハーサルにおいてあれだけ”Closed system. End to end.”にこだわっていたジョブズもiMacには汎用的なUSBポートをつけ「これでいいだろ、ウォズ」と微笑みかけます。


やはり「完璧にクローズドなシステム」は少し窮屈に感じますね。

<プロフィール>

大辻雄介

大手進学塾・予備校に勤務したのち、ベネッセコーポレーションでICTを活用した教育の事業開発を担当。日本初の無料インターネット生放送授業を行い、当時最大15,000人が同時に受講した。その後、隠岐にある海士町へ移住し、隠岐國学習センターの副長として日々生徒の指導を行う傍ら、島のICT活用を推進している。海士町から離島中山間に遠隔授業を配信しており、リクルート「スタディサプリ」数学講師、ベネッセ「受験算数ウェブ授業」算数講師もつとめる。2016年度、島根県情報化戦略会議委員。

テレビ東京系列「クロスロード」2016年10月8日(土) 出演

 

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