大辻雄介の「教育のIoT思議」 第6回:汎用端末か専用端末か

次世代に必要とされる学習端末の在り方

大辻 雄介/2016.12.27

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Closed system. End to end.

遅ればせながら映画「スティーブ・ジョブズ」をネットの映画配信サービスで観ました。映画配信サービスはiTunesのようなダウンロード型とHuluのようなストリーミング型がありますが、ダウンロード型のほうが出張の際などは便利ですね。特に離島に住む私などは、3時間超のフェリーの乗船時間には重宝しています(冬は波が高く、船体が揺れるので仕事は辛いのです)。

さて鑑賞した「スティーブ・ジョブズ」は監督ダニー・ボイル、主演マイケル・ファスベンダーである2015年版のほうです。

 

この映画でジョブズがとにかく拘ることは”Closed system. End to end.”(完璧にクローズドなシステム)です。「ユーザはカスタマイズがしたいんだ」というウォズニアックの主張を退け、専用ツールがないと筐体を開けることすらできないコンピュータをつくるジョブズ。

当初、実際に売れたのはウォズニアックが手がけたAppleⅡのほうでしたが、美しさを追求するジョブズの執念にも感動するものがあります。「ジョブズは芸術家」という評価をあらためて認識すると同時に「絶対上司にはしたくないな」と考えた次第です。

タブレット学習サービスはベネッセとZ会で真逆のアプローチ

教育業界でも「タブレット学習サービスはクローズドシステムがよいのか、そうでないほうがよいのか」という議論はつきません。ベネッセコーポレーションはiPadを端末として使用していましたが、「インターネットに接続できる端末は学習の阻害になる」という理由で独自開発したAndroidの専用端末にサービスの切り替えを発表しました。

切り替えと言ってもiPad以前にベネッセコーポレーションは学習専用端末を販売していたので、この動きは実は同社にとって原点回帰にあたります。ベネッセコーポレーションが提供する通信教育「進研ゼミ」のコンテンツにしかアクセスできない端末なので、まさに”End to end”なクローズドシステムになります。

一方、同じく通信教育会社であるZ会はむしろ逆でインターネットにもアクセス可能で汎用的なiPadで学習サービスを提供しており、今後もその方針で開発を続けるようです。

せっかくタブレット端末があるのだから「インターネットで調べ物もしたい」「iBooksで英語の原書を読みたい」という顧客のリクエストに答えて汎用的なiPadに路線を変更したというZ会の取り組みは。「進研ゼミ」と全く正反対ですね。

他の例を挙げると、近年頻繁に取り上げられるウェアラブル端末でも、サービスの特徴に合わせて選択されるデバイスが各社分かれています。例えば体調管理のサービスだと、精緻な計測を目的とした独自デバイスの開発路線をたどる医療機器メーカーが存在する一方、他のWebサービスとの連携に力を入れているアプリデベロッパーは、Apple WatchやAndroid Wearのプラットフォームに乗ることで着実にユーザー数を伸ばしています。

こうしたことからも、教育に限らず、IoT全体に言える事として、ユーザー体験を意識した上でのデバイス選択がサービス設計にとって重要であると言えそうです。