デバイス部門、年50億ドルの赤字

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、すでに削減対象となったのは、クラウドゲームサービス「Luna(ルナ)」や、Alexaのマーケティング、AI、プライバシー部門。家庭用ロボットなど先進ハードウエアの研究開発部門「Lab126」も対象になった。

 リンプ上級副社長は「このニュースを理解することが難しいのは承知しているが、デバイス・サービス部門は引き続きアマゾンにとって重要な投資分野であることを強調したい」とも述べた。

 アマゾンのデバイス・サービス部門は、電子書籍端末「Kindle(キンドル)」やスマートスピーカー「Echo(エコー)」などのヒット商品を生み出した。その一方で、指輪型端末「Echo Loop(エコー・ループ)」や子供向けビデオ通話端末「Glow(グロウ)」などヒットしなかったものもあるとウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。

 同紙によると、デバイス・サービス部門は1万人以上の従業員を抱え、アマゾンの投資予算の多くを受け取っている。だがここ数年は、年50億ドル(約7000億円)以上の営業損失を出している。

急成長から一転急減速、テック大手がコスト削減

 アマゾンのリストラ策を巡っては、米ニューヨーク・タイムズなどの米メディアが22年11月14日に報じていた。レイオフ(一時解雇)の規模は流動的であるものの、約1万人に上るとみられ、1994年の創業以来最大の人員整理になると伝えていた。

 アマゾンがレイオフによる人員削減を実施するのは珍しい。これに先立つ22年10月、アマゾンは主力の小売部門でオフィス職の採用を年内凍結すると明らかにした。22年11月2日には対象を拡大し、クラウドサービスを含む全社でオフィス職の新規採用を数カ月停止すると明らかにした。

 同社はこうして新規採用を抑制し、自然減による人員減少を促してきた。業務評価の低い従業員には退職勧奨を行ってきた。ニューヨーク・タイムズによると、同社は2001年に当時の全従業員の15%にあたる1500人を解雇した。18年には数百人を解雇したが、1万人規模の解雇はこれまでにない。

 経済の正常化に伴う事業成長の減速により、米メタや米リフト、米グーグルなど多くのテクノロジー企業がレイオフを実施したり、検討したりしている。アマゾンもその中の1社だとウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。

 現在、米テクノロジー大手は同様の問題を抱えているという。各社は新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)に伴う需要増で事業を急拡大してきた。だがパンデミック時の勢いが弱まった今、成長が鈍化。増えすぎたコストを削減するべく、対策に乗り出している。