深刻な人材不足。いつの頃からか、「介護業界」はこう形容されるようになった。人手が足りないから、ひとりあたりの労働条件も厳しいものになる。すると、ますますが人が集まらなくなってしまう。高齢化が進む日本において、介護の手は必要不可欠なもの。しかし、これでは堂々巡り。そこで立ち上がったのが、介護付きホームの運営を手掛ける株式会社アズパートナーズだ。介護業界を変えるべく、同社が手に取ったのがIoTの力。業界初のIoTシステムである「EGAO link」を開発し、画期的ともいえる方法で労働環境の改善に取り組んでいる。

高齢者の状態をを24時間体制で把握する

「EGAO link」は、施設に入居している高齢者の様子を“24時間体制”でモニタリングできるようにしたIoTシステムだ。モニタリングといっても、PCの前に張り付いている必要はない。何かがあったときには、スタッフが持つスマホに通知が届くようになっている。

「ご入居者一人ひとりのお部屋に入らなくても、スマホを使って状態のチェックができるんです。ぐっすり眠っているのか、横になっているけれど覚醒しているのか、あるいはベッドから起き上がっているのか。それらの様子がひと目でわかります。ナースコールを受け取る前にスタッフが能動的に動けるようになったので、結果的にご入居者から呼び出される回数が減りました」(株式会社アズパートナーズ広報担当者、以下同)

入居者の状況はスマホに通知がくるため、作業中も確認できる

また、介護業務において大きなウエイトを占める“記録”の自動化にも成功した。

「ご入居者になにかあった場合、一つひとつ手書きで記録する必要があったのですが、『EGAO link』を導入すればその必要はありません。いつナースコールを受けたのかがシステム上に記録されていくため、業務の効率化が図れています。詳細をスマホから入力することも可能なので、現場スタッフが紙と格闘する時間は大幅に短縮できました」

スマホでの記入画面

既に導入している「アズハイム町田」での実績によると、1日あたり約17時間の労働時間(スタッフ2人分)の削減につながっているという(1日8時間勤務するスタッフが11人いると仮定した場合)。導入前はナースコールの1日平均が90回だったのに対し、導入後は25回までに減少。さらに介護記録の記入や報告書の作成に8時間かけていたところ、1時間程度まで削減できたというから、その効果には目を見張るものがある。