明治42年に築造された五条坂京焼登窯(元藤平陶芸登窯)。平成20年に京都市の所有となり、産業遺産として保存されていた……

蔵を再定義し、シェアブリュワリーで酒造りを民主化する

今井さんは酒造りを取り巻く仕組みにも異を醸そうとしている。

「日本の酒造りは、現代的な視点から見ればものづくりが民主化されてない。蔵を再定義して、アトリエ的な場所、みんなが酒を造れる場所で、酒造りを開いていきたい」

その拠点として、京都・清水の五条坂京焼登窯跡にシェア型のマイクロブリュワリーを構想している。2026年秋に始動予定だ。

9つの焼成室が連なった登り窯は職人たちが共同窯場としてきた。この産業遺産が、新しい酒造りの現場になる。2026年秋にシェアブリュワリーとレストランをオープン予定

コンテンポラリーアートと重なる、イノベーティブSAKE

未来の酒のビジョンを聞き、未知の酒の味を試しながら、大して酒好きじゃない私はギャラリーにいるようなワクワク感に酔った。実際、LINNÉのイノベーティブな酒造り、環境、社会への提言は、今どきのコンテンポラリーアートのコンセプトと重なる。

ハイブリッド・アイデンティティ(日本酒と焼酎のコラボや海外でのSAKE)、トランスナショナリズム(脱「日本の酒」の真正性)、ボーダーレス(異素材や、醸造技術の拡大)、サイト・スペシフィシティ(各地でのファントムブリュワリーの実践と、その土地からの学び)、リレーショナル・アート(酒造りからサービスまでのコミュニケーション)、ソーシャリー・エンゲージド(コミュニティー、他分野人材との連携)、リサーチ・ベースド・プラクティス(多彩な風土や発酵手法に学ぶ酒造り)、エコロジー(未利用材料の活用)、バイオアート(酒づくり、そのもの)。

今井さんは「日本酒は、世界でいちばん自由な醸造酒」と言う。食のアートに新しいフィールドを広げる、その自由さこそが世界遺産だ。