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 電子商取引(EC)市場が15兆円を超え、「第二の小売業態」へと成長する一方で、宅配便の取り扱い個数は年間50億個を突破し、ドライバー不足に象徴される「物流の2024年問題」が深刻化しています。サプライチェーンの不安定化と顧客需要の細分化が進む中、供給と需要の両面で不確実性が高まり、小売業の構造そのものが揺らいでいます。

 今企業に問われているのは、「何を売るか」だけではなく、「どう届けるか」です。配送は単なる物流機能ではなく、顧客との最初の接点である“静かな接客”へと進化しています。本稿では、「届ける体験」を革新するラストマイルDXを、企業の競争力へとどう変えていくのかを探ります。

ECは第二の小売業態――顧客接点の中心がリアルからデジタルへ

 経済産業省の商業動態統計※1によると、2024年の日本の小売市場は次のような構造になっています。スーパーマーケットが約16兆530億円、コンビニエンスストアが約12兆8887億円、ドラッグストアが約8兆9199億円、百貨店が約6兆3282億円、家電大型専門店が約4兆7288億円、ホームセンターが約3兆3988億円です。

 一方、同省によれば、日本の物販系分野におけるBtoC-ECの市場は、約15兆2194億円に達しています※2。これらの数字を照らし合わせると、ECはすでにコンビニエンスストアに次ぐ「第二の小売業態」として位置付けられる規模です。

 日本の小売市場は、もはや「リアルvs EC」という対立構図ではなく、「リアルの中にECが溶け込み、顧客体験を中心にチャネルが再編される」段階へと移行しています。

※1:経済産業省(2025)『2024年小売業販売を振り返る;4年連続の増加となった小売業販売』(https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/archive/kako/20250610_1.html)
※2:経済産業省(2025)『令和6年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)』(https://www.meti.go.jp/press/2025/08/20250826005/20250826005.html)