画僧提供:shutterstock.com / Emagnetic

「大きなロケットを造るより、小さなロケットをたくさん飛ばせばいい」。ニュージーランド発の宇宙スタートアップ、ロケットラボを創業したピーター・ベックが打ち出した発想だ。宇宙開発とは無縁だった同国で、民間企業として世界初の宇宙港を築き、小型衛星向けのオンデマンド輸送という新市場を切り開いたベック。自国の地理的制約をいかに強みに転換し、宇宙へのアクセスの民主化をどう実現したのか。

ニュージーランドから宇宙産業を生み出した起業家

 良い戦略の条件とは、「発想の転換」が含まれていることである。つまり、自社の構造的弱みを強みに転換し、競合の構造的強みを弱みに転換する発想だ。

「自社の構造的弱みを強みに転換すること」を現実化したのが、ニュージーランドの宇宙産業であり、その仕掛け人が民間人の起業家ピーター・ベックである。

 ニュージーランドは、最近までは全く宇宙開発とは縁のない存在だった。しかし、宇宙スタートアップ企業であるロケットラボの創業者であるピーター・ベックは、「国が宇宙を独占する時代は終わる」という信念の下、「小型衛星専用ロケット」という新市場の存在を見抜いたのである。これがニュージーランドの国家レベルでの産業創出につながった。